題
□嘘の上塗り
1ページ/2ページ
伸ばした手を
引っ込めた。
静かに言葉を
飲み込んだ。
行き違う二人の10のお題
嘘 の 上 塗 り
時間は関係ない。
深夜だからだとか、早朝だからとか関係ない。
戦いは、いつだって自分たちの隣にあるのだから。
それは軍人になった時からわかっていた。
が、流石に深夜のど真ん中になると集中力も散漫になるもので。
「…まだ起きてたの、レイ」
「あ、あぁ。うるさかったか?」
「いや、別に」
シンは大あくびをしながら簡易ベッドから降りた。
インナーでキーボードをいじるレイに近づき、その画面を覗き込む。
「うわー、なんだよこれ」
「報告書」
「そういうのって…」
「いいんだ。俺が好きでやってるようなもんだからな」
「……物好き」
シンは軽く肩を竦めて見せた。
「にしてもさ、いつまでこんなことしてなきゃいけないのかな」
「こんな、こと?」
レイがようやくシンを振り向く。
「戦争」
「…そうだな」
「平和、って遠いな」
「互いの正義がぶつかり合うんだ。一筋縄ではいかないさ」
「うん…」
どちらかがどちらかに屈服する。
それこそが戦争の終わりだというなら、それほど難しいものはない。
だからこそ、遠いのだ。
以前に、平和とは何か。
万人の望む平和とは何なのか。
一言で片付けるには、それも難しすぎる問題だ。