□嘘の上塗り
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伸ばした手を

引っ込めた。

静かに言葉を

飲み込んだ。



行き違う二人の10のお題
嘘 の 上 塗 り






時間は関係ない。
深夜だからだとか、早朝だからとか関係ない。
戦いは、いつだって自分たちの隣にあるのだから。


それは軍人になった時からわかっていた。
が、流石に深夜のど真ん中になると集中力も散漫になるもので。



「…まだ起きてたの、レイ」

「あ、あぁ。うるさかったか?」

「いや、別に」


シンは大あくびをしながら簡易ベッドから降りた。
インナーでキーボードをいじるレイに近づき、その画面を覗き込む。


「うわー、なんだよこれ」

「報告書」

「そういうのって…」

「いいんだ。俺が好きでやってるようなもんだからな」

「……物好き」


シンは軽く肩を竦めて見せた。


「にしてもさ、いつまでこんなことしてなきゃいけないのかな」

「こんな、こと?」


レイがようやくシンを振り向く。


「戦争」

「…そうだな」

「平和、って遠いな」

「互いの正義がぶつかり合うんだ。一筋縄ではいかないさ」

「うん…」


どちらかがどちらかに屈服する。
それこそが戦争の終わりだというなら、それほど難しいものはない。
だからこそ、遠いのだ。

以前に、平和とは何か。
万人の望む平和とは何なのか。

一言で片付けるには、それも難しすぎる問題だ。



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