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□君がいるだけで良かった
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しかし、そんな獄寺の決意はすぐに打ち砕かれてしまった。
それは昼休みのこと。綱吉がトイレに行く為に獄寺の傍を離れたほんの数分間のうちに起こった。
この時のことを思い出すと、獄寺は自責の念に苛まれる。いくら綱吉が嫌がったとしても、無理矢理にでも付いていけば、もしかしたらこのようなことにはならなかったかもしれないのに、と。
綱吉がいない間、獄寺は先程の数学の授業を分かりやすくしてノートにまとめていた。これは、勉強の苦手な綱吉の為だ。たまに山本も見せてほしいとぼやいているが、当然ながら見せたことはない。獄寺は綱吉の為にしかこういうことはしないと決めているのだ。
新しく習った公式の解説がそろそろ終わりそうだという時だった。
「きゃあああああっ!!」
突然、女子生徒の悲鳴が響き渡った。
大きな悲鳴は、もしかすると校内に響いたかもしれない。和やかに昼休みを過ごしていた生徒達はその声に驚き、ざわつき始めた。
獄寺も例外なく驚いたが、それ以上に嫌な予感がした。教室内を見渡してみれば、トイレに行っているはずの綱吉と、……エルザの姿がない。
「クソッ、まさかあの女!」
「お、おい、獄寺!?」
嫌な予感は気のせいであってくれと、獄寺は勢いよく教室を飛び出した。
それに山本も続く。……山本の方は、一体何が何なのか訳もわかっていない様子なのだが。
声がしたのは屋上の方だ。
階段を一段飛ばしで駆け上がり、獄寺は屋上へと続いていく重い扉を開けた。
扉を開けた瞬間、強い風が吹き付けてくる。獄寺はそれに思わず目を閉じた。
そして、ゆっくりと目を開ける。そこで見たものは……。
「じゅ、十代目……!?」
腹を押さえてしゃがみこむエルザと、それを呆然と見つめる綱吉の姿だった。