Novel
□四温の雨
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容姿も成績も全て、中の中。
真面目キャラを演じて一年と数ヶ月。
俺の周りを取り囲んでいるのは、綺麗な上級生のお姉様方でも、純情可憐な下級生でもなく、実におっかない風貌をした男達。
「お兄さん、お金貸して〜?」
テレビで見ているだけだった恐喝を体験するはめになるとは思ってもみなかった。
危ない橋は渡らずに、がモットーの俺には、この現状は惨劇としか言いようがなかった。
「もしくは…尻、借してよ!」
「あ、俺も!生でヤッてみてぇ!」
生憎俺は非生産的なセックスに賛同出来る程、寛大な奴じゃない。
どちらかと言えば嫌悪感を抱くタイプだ。
平々凡々、特徴一切なし。
故に、考えも至ってノーマル。
「あのぉ、俺、お金も持ってないですし、それに、その…ホモじゃないんで…」
あんたらの道具にされるのはまっぴらだ、何て臆病な俺は言えなかったけれど。
「止めろ…」
正義のヒーローっていうのは、案外近くにいた様だ。
正義のヒーローは、片手に鉄パイプを持って、鋭い目付きでこちらを睨んでいた。
俺の人生終わってんじゃないか、と疑いを持ちたくなる。
気持ちが悪い顔で笑う不良二名+物凄く怖そうなお兄さん。
どう考えたって助かる道なんてなさそうだ。
強い風が吹き、砂埃が舞った。
砂埃が目に入り、涙の滲んだ目を擦る。
幾度か歪な音が響いた後、もう一度強い風が吹いた。
目の違和感がなくなり、目を開いた瞬間、現状は大きく変わっていた。
「大丈夫…ですか?」
そう言って、坊主の、いや、ベリーショートな髪形をした悪役面の男に声を掛けられた。