Novel

□デジェル
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好きな人がいた。
でも、告白する前に振られた。
というか、相当嫌われてるみてぇ。

「あんな奴、仕事じゃなきゃ、抱けねぇよな」
「マジ、無理。なんで、お前らは可愛い子なのに、俺はあんなムサイ奴なの?マジ桜ちゃんがよかった」
「榛ちゃん、かわそっ。」

親父の借金を返すために仕方なくこの仕事を選んだ。
いくら金がないからって、AVなんかに出て、誰にでも足開くとか思われてる。

でも、仕事以外で男に抱かれたことなんてない。
男に恋したこともない。

初めて男に恋をした。
その人は、人気AV男優の朽木榛名。

新作の撮影で一緒になって、舞い上がってた。
やっと、ブラウン管に映っていた憧れの人に会える。
その上、信じられないことに相手役は俺の好きな榛名さん。

でも、俺は、嫌われてるみてぇ。

周りがうるさい。
会話に参加する気もねぇ。
なにより、俺なんかが会話に加われば嫌がられるだろうし。

俺の気持ちなど知る由もない榛名さんは、
躊躇いもなく俺に声を掛けてきた。
眩しいほどの綺麗な顔が『よろしくね』と口角を上げたのが目についた。
胸が痛すぎて、掠れた声で返事を返した。

そんなこと思ってもないくせに。
零れそうな涙を必死に堪えた。





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