Novel

□デジェル
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寒さが苦手な俺には、北海道での撮影は思った以上にキツイ。

何より、心がずっと曇ったままで、チラチラと舞う雪でさえ灰色に見えた。

こんな敵ばっかの現場で、唯一友達ができた。

「ねぇ、憲ちゃん、何でいっつも泣きそうな顔してんのー?」
「泣きてぇから」
「何でー?」
「失恋」
「しょうがないなぁ、お兄さんの胸を貸してあげるから泣きなさい」

いつもなら、こんなこと言われたら殴ってる。
いつもなら、素直に人の前なんかで泣かない。
いつもなら…。
でも、今回は辛過ぎてどうにかなりそうだ。

「…っ、っく、俺、まだ…告ってもねぇのに」
「うん。それで?」
「悔しい」
「うん」

マジ兄貴みてぇ。
女みたいな顔だけど。
桜は、この辛過ぎる場所で唯一の味方だ。

明日からはカップルに分かれての撮影が始まる。
榛名さんと一緒に撮影できるのがあんなに嬉しかったはずなのに、今は辛さしかない。

顔もまともに見れないのにセックスする自信なんてない。
明日は、ずっと、目を閉じていよう。





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