Novel
□カスタネット・リリィ
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二十三にもなって体操着を着るはめになるとは思っても無かった。
いや、正確には着せられたに近い。
「憲太!これ、なーんだ?」
俺の目が正常なら、体操着。
しかも、ブルマっぽい作りに見えるんですが。
「ねぇ、これ着て、学生プレイしよ!!」
そんなの仕事でも着たことないんだけど。
「じゃーん、俺もね、白衣借りてきたんだ!!」
俺の彼氏は、ド変態だったみたいです。
嬉しそうに喋って、超綺麗な顔で笑ってるけど、この人の言ってること完全に変態発言だから。
いくら俺が榛名に甘いとはいえ、今回ばかりは全力で拒否する。
「絶対ぇ、ヤ。俺ノーマルでいい…」
「えー、やろうよ!絶対興奮するって!!」
そういう問題じゃなくて、年下にこんな格好を晒すのはいくらなんでも恥ずかしすぎる。
仕事じゃないんだから、すぐに了承できない。
しかも、段々榛名の機嫌が悪くなってきたもんだから、ますますどうしたらいいのか分からなくなる。
じゃあ、他の人に着てもらうしと言って出て行こうとするもんだから慌てて手を掴んだ。
「…着るから…」
俺は自分に自信が無いから、榛名が冗談でも他の人に頼むだなんて言ってくると、何とかして引き止めなきゃって焦る。
俺だけがこの恋に焦っているようで少し切なくなる。
「なに泣きそうになってんの。嘘だよ。俺には憲太だけだから」
抱きしめられて、鼓動が早くなっていく。
急に優しくなるのは卑怯だ。
拒みきれなくなるし、榛名が欲しくなる。
「だから、これ、着てきて」
『はい』と満面の笑みで言われて溜息が出そうになった。
そういえば俺さっき着るからなんて言ったような気がする。