Novel

□ソマリ
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大型の猫が拗ねてベットに潜り込んで唸っている。
事の発端は、本当にくだらないものだった。

「一生のお願い、ね!ちょ、コレ着て〜…!」
「ざけんな!俺は、女じゃねぇ!」

猛の前に、尚文から借りたナース服を置いて土下座する男がいた。

「何で何で!何がダメなの〜!」
「…いや、何がって言うか…全部」

初めてセックスしてから、数週間。
そりゃあ、いきなりこんなプレイを強要するのはどうかなとも思った。
けれど、それ以上に欲望が勝ってしまっているのだ。

この間見たアダルトビデオの映像が頭から離れない。
もちろんAV女優なんかに興奮したのではない。
彼女の恰好を猛がしてくれたらどんなに可愛いかと想像すると、胸の鼓動が早まった。

やや日焼けした猛の肌に、純白のナース服を着せてみたい。
数週間前から、そのことが頭の大半を占めていた。

言い争いが続くこと数十分、アキヒは完全に拗ねた。

「俺のこと嫌いなんでしょ〜!」
「何で、そーなんだよ!」
「だって〜…もぉ、いいし。俺寝る」
「おい!ざけんなテメェ!」
「ぐ〜、もう寝ましたぁ〜」
「起きてんじゃん!」

窓辺の日差しが俺に逃げ場を与えるように、酷い睡魔に襲われた。
猛の声を薄らと聞きながら、返事も返せずに意識を手放した。

夢の中の猛は、ナース服を着ながら恥ずかしそうに俯いている。
真っ白なナース服から除く日焼けした肌が妙に厭らしい。
この光景が現実だったら、どんなにいいことか。

体に感じる重みで目が覚めた。
薄らと目を開くと、ぼんやりと人影が見えた。
それがナース服を着た猛だと気付くのにはしばしば時間がかかってしまった。

「満足か、変態」
「たけちゃ〜ん!!も、マジ大好き!」

ナース服を着た猛を確認すると、瞬間的に上半身が跳ね起きた。
猛の胸に頭を擦りつけながら、強く抱きしめると、真っ赤な顔が「キモイぞ」と俺の頭を緩く撫でた。
酷い言葉とは裏腹の行動に笑みが漏れる。


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