Novel

□ソマリ
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拗ねて寝てしまった大型の猫を見ながら、溜息が漏れた。

なんだか子供の玩具を奪ってしまったような罪悪感に襲われて、心がむず痒くて気分が悪い。
今日何度目かの溜息を吐きながら、ナース服を手に取った。

決して着心地がいいとはいえないナース服を着ながら、七原の上に跨り柔らかな髪を軽く撫でると、「んー」と声を上げながら、薄く目を開いた。

寝ぼけていた七原が、俺の姿を確認するなり、ヒュンと空を切る音を響かせながら、上体を起こした。

「満足か、変態」
「たけちゃ〜ん!!も、マジ大好き!」

本当に嬉しそうに笑うから、こちらの方が照れてしまう。

「超可愛い〜!」
「嬉しくねぇし」

到底可愛いには程遠い自分に、不似合の言葉に苦笑いを返す。

「お前さ、ちゃっかり自分の分も用意してたんだな」

そう言って紙袋を目の前で揺すると、慌てたように紙袋を奪い取られた。

「中見たよね…?今の会話の流れからすると〜…」
「見た。やっぱり、変態だったんだなと思って」
「ですよね〜、ちょっと、どうしましょ?」
「着ればいんじゃね?」

余りにも自然に口をついて出てしまった言葉に自分でも驚いた。
それ以上に、七原は驚いた顔をしながら、話しかけてくる。

「マジ?じゃ、ちょっと待ってて着替えてくる〜!」
「ここでいいじゃん」
「…羞恥プレイですか?猛さん…」
「は?何で?着るだけじゃん!」
「見られてると恥ずかしい乙女心」
「お前男だろ」

暫らく沈黙が続いたが七原はその沈黙を振り払うように白衣に袖を通し、伊達眼鏡を掛けてみせた。
壁際にかかっている鏡に映った自分を見ながら、「うわ〜、俺、超男前」などとほざいている。
さっきのセリフがなきゃ、いい男なのに。
残念な仕上がりとしか言いようがない。





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