Novel
□余りにも長すぎる幸福の不在
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遠目に映る光景に何度溜息を吐いただろう。
俺は榛名みたいに特別カッコイイわけじゃないから、そういう風に可愛い子とくっついて楽しそうに喋っているのを見ると、堪らなく不安になる。
そういう気持ちを抱えたまま過ごすのは結構キツイ。
俺は確かに榛名より年上だけど、年上だからって好きな人が他の奴と楽しそうにくっついているのを見て余裕でいられる程大人ではない。
このままこの時間が続いたらさすがに辛い。
それに俺も俺だと思う。
榛名に嫌われたくない一心から、言いたいことが言えずにいる。
遠慮というよりは、恐れに近い感情に支配される。
いつか俺なんて捨てて、ああゆうふわふわしてて性格も穏やかな子を選ぶのかな、と思ったら言葉が喉に詰まって、何故か涙が出そうになった。
きっと、自分のことで俺が泣きそうになってるなんて思ってないんだろうな。
だから、そんなこと言うんだろ?
「憲太、どした?体調悪い?」
やせ我慢の様に口から出た言葉に嫌気がさす。
「何でもねぇよ…」
これ以上こんな情けない顔を見られたくなくて、顔を洗いに行って来ると言ってその場を後にした。