Novel
□未熟な言葉たち
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外に出るのも煩わしいくらいの寒さの中、屋上には防寒装備を施したいつものメンバーが勢揃いしていた。
そんな中六は忙しなく視線を泳がせ、仲原の顔色を窺っている。
読書中の彼に話しかけるのは自殺行為といっても過言ではない。
「仲原ぁ、あの、今いい?」
「…返事返さなくていいなら」
「あの、えっと、今度の日曜さ…」
言い辛そうに言葉を濁す六に、菫がニヤニヤと嫌な笑みを浮かべる。
「有糸、見てみ。六、顔真っ赤」
ふは、と笑って見せる菫に有糸は「菫ちゃん鼻赤いよー」と寒さで僅かに赤くなった鼻に自らの鼻を擦り付ける。
擽ったそうに笑う菫に、アキヒは呆れた様に猛の方を見る。
「たけちゃん、アレってバカップル?」
「…多分」
「いやぁね〜、俺達いんのにっ!」
笑いを含んだ声で話す二人に菫の野次が飛んだ。
「…うっせぇ、ハゲ」
「なぬぅー!大体前から言いたかったんだけど、俺みたいなサラサラヘアーの男前にハゲなんて言ったら、頭部にコンプレックスを抱く全世界の人を敵に回すよっ!」
「別に敵に回してもいいし。事実を伝えるのが報道です」
「お、おまっ…誤解を招くようなこと言うな!カツラ疑惑が浮上したらどうすんだ!お馬鹿!」
「…七原、カツラが浮いてるぞ…」
「たけちゃんも乗らなくていいよ!」
周りが騒がしくなったからか六の緊張も少しは解れ、いつもの調子を取り戻す。
「今度の日曜、デートしよっ!」
「嫌だ」
仲原は難しそうな本に視線を向けたまま、そう答えた。
その答えに六は不満げに食って掛かる。
「何で!?付き合って二週間も経つのにデートもしてくんねぇってひでぇよ!」
「うるさいな、一人で散歩でもしてればいいだろ」
「そんなん何もおもろくねぇじゃん!」
漸く菫達が静かになった頃、今度は六が騒ぎ出した。
その様子に菫はにやりと笑うと、またも騒ぎの渦中へと参戦した。