Dream・ファントムPain2
□ファントムPain 蜜夜
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金の糸が散らばる。
時折、それが夜の闇間に光を射つのをキッドは視線の端で捉える。
だが、それも男の思考の全ては奪えない。
己の下で滑るようななめらかな肌の感触。
柔らかな丸みを帯びた形はとても自分と同じ人間とは思えない。
“女は魔物”
誰が言ったのか知らないが、言い得て妙だ。
目の前の女との行為にこれ程我を忘れるのは、きっとこの魔物の術に囚われているからだ。
何度も穿ち、撫で擦っても募る飢餓感はそうとしか思えない。
どこまでも溶けて、混ざり合いたい。
だけどお互いの境界がそれを邪魔する。
でも、1つになってしまえばこの麻薬の様な快楽はきっとそこで終わってしまうに違いない。
1つになりたい
何時までも感じていたい
甘い苦悩が男を益々滾〈たぎ〉らせた。
「んっ、ぁあ…それ、……っやぁっ」
ぐいっと押し付けられた逞しい腰が奥を穿〈うが〉つのと同時に、快楽に尖った先端が押し潰された。
身体は敏感になりすぎて辛いのに、
「…の、割には腰が動いてるぞっ、」
指摘されて目尻がカッと熱くなる。
ピタリと押し付けられたそこに自ら擦りつけるように腰を震わせてしまう。紅い尖りは快楽に剥けきり刺激が直接響いてくる。
「や、や、」
止めて欲しいのか、もっとして欲しいのか、どちらかわからずに声を上げる。
だが、容赦の無い男は後者と受け取った様だ。
ピタリと重なったその隙間に手を差し込み、その場所を指腹で擽る。
「っんあっ!……っつ!…、…!!…」
言葉にならない声を上げてサラが頭〈かぶり〉を振った。
刺激する度に膣壁がズクズクと蠢動してキッドの四肢を痺れさせる。
絶えず促される吐精を堪えながら、キッドは満足気に息を吐いた。
「……っ、ハァー………」
「……、キッド…、お願…」
漸く聞こえた言葉らしい言葉に視線をやると、強すぎる快感に生理的な涙を浮かべたサラが自分を見上げている。
何度こうして懇願しただろうか。
絶頂の際〈きわ〉まで押し上げられるのに、突き落としてはくれない。
力の入らない足でそれでも最果てを促すようにキッドの腰に巻き付ける。
「…後が辛いだけだぞ、」
死刑宣告の様な睦言を吐くキッドが憎らしい。
言いながらも胸の頂をちゅぅ、と吸われてまた小さく喘がされた。
「もっ、…お願………ぃあぁっ!!」
ズン、と子宮に響く衝撃にシーツを握りしめる。
喘ぐ為に開いた口にキッドが唇を合わせたまま命令する。
「舌、出せ」
ん、
震えながらも従順に差し出されたそれをキッドが強く食んだ。
舌を絡めるだけで、サラの膣中が切なくまとわりつく。
それを楽しんだ後、反った背中に手を回しグッとその細腰を固定し直す。
シーツを握りしめている彼女の手を自分の背中に回させる。
「…掴まってろ。」
そんな些細な言葉にも身体がキュンと疼く。
だが、次の瞬間にはそんな甘い疼きは掻き消された。
「ぁあ!ンッ、んンッ!…」
あっ、あっ、と意味をなさない喘ぎを上げ続けて、力の入らない身体はもう人形の様にキッドに揺さぶられるだけだ。
みっちりと膣中に埋められるそれが抉るようにスライドすれば、何処にあるかも知れない絶頂のスイッチを何度も押す。
「もっ、だめっ……はぁっ、ン!や、だっ、キッ………っド」
手足の先まで快楽が拡がり始める。のし掛かる男は一向に攻める手を緩めてはくれない。
「…サラ」
霞む意識にもはっきり聞こえた言葉にサラが視線を合わせたら、
「好きなだけっ、…イけ」
夜にも鮮やかな紅が、瞼の裏でハレーションを起こした。
ぎゅんと締まる膣壁にぐっ、と眉を寄せてやり過ごす。
サラの白いうなじから胸元までがピンクに染まりあがり、堪らず身を屈めてそこにかぶりつく。
「…………っつ、ひぁ、…」
喉を震わせて喘ぐ彼女を尚も揺さぶり、抱き寄せる。そのキッドにも玉の様な汗が浮かんでいた。
「も、イってるかっ、…ら…や、…やぁ」
ひくつく身体を無視して自身を押し込む。一際大きく戦慄いたサラが震える腕でキッドを押し止めようとする。
「まだ、っ、だぞ」
オレはイってない。
言うが早いか、サラをくるりとひっくり返す。身の内に差し込まれたままの楔がぐり、とまた違う場所を刺激して枕に顔を埋めたままのサラはくぐもった喘ぎを溢した。
「…腰上げろ」
そう耳に吹き込まれたサラはもう無理だと弱く頭を振った。
予想していたのかキッドが耳元でふっと笑う気配がする。
「…サラ」
名前を呼ばれて思わず腰が震えた。
「…あっ、」
まだ芯を持ったままのキッドをキュッ、と締め付けてしまうのを自分で感じた。
「……サラ?」
勝手に反応する身体にサラはなんてはしたないんだろうと思う。
「お前、名前呼ばれるのが好きなのか?」
余りの羞恥に枕にギュッと顔を押し付ければ、露になった首筋にキッドが舌を這わせる。
「…サラ」
からかいの意図を持った呼び掛けにもキュウキュウと締め付けて反応してしまう。
「…やぁっ…」
「っく、すげぇ…な、そんなに好きか?」
問いながらゆっくり抜き差しを再開し始めたキッドが、背骨をなぞるように手を這わせる。
「ぁあ、…ん、す……ぃ…」
好きか?って?
そんなの好きに決まってる。
「好きっ、あっ、好きぃ…キッ……ド…」
名前を呼ばれる事じゃ無くて、こうして熱を与えてくれるキッドそのものが。
「すき、……」
急にぐっと質量を増したそれにサラが翻弄された時、キッドがその反応を誤魔化すように悪態を吐いた。
「くそっ、…このっ、バカ女…」
何時もの呼び方にサラの腰がしなった。一層締め付ける膣中にキッドは白旗を上げた。
「どっちも、かよっ」
サラと呼んでも、バカ女呼ばわりしても嬉しそうに自分を締め上げるそこに忌々しい気持ちになりながらも、自身を解放してやる。
快楽に融けきり、降りてきた子宮のとば口にぴったりと合わせて最奥で爆ぜる。
女の中に汚濁を塗り広げ、汚すその行為が、キッドの欲望を埋めていく。
ぱたりと力を無くした手がベッドに落ちる。
キッドに掴まれて腰だけを高く上げた格好でくったりと意識を飛ばしたサラの蜜壺から己の白濁がトロリと溢れ出るのを見て、早くも貫きたくなってキッドは苦笑いを浮かべる。
いっそ、もう一回と、すぐに力を取り戻した己をくちゅりとそこに宛がえばひくつく秘裂がすんなり包み込む。
これは、流石に…
「……悪ぃ」
一応の謝りを入れるが止めるつもりは無い。
そんな謝罪自体意識の無い彼女には届いてもいないのだが。