Dream・カルマRain

□カルマRain 蒼
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今日で全てが終わる。

「……終わらせる。」
ボソリと、口に出した言葉は小さく、だが強い決意めいた響きを持っていた。


少女がその海賊団に会ったのは六年前の酷い雨の日だった。窓を打ち付ける風や雨音に、弟が怯えてベッドに潜り込んできたのを今でもよく覚えている。
父も母も貧しいながらよく笑う人だった、村の人達も同じだった。
ある事情から皆、人目に触れないようひっそりと息を潜め、寄り添うように隠れて暮らしていた。
そこは山深く、切り立つ岩や深い谷が人を遠ざけ、時には自然が猛威を振るい立ち入ろうとする者達の命を奪った。
その環境は自分達にも当然厳しいが、また同時に守られてもいた。


やがて雨も止み、気味が悪いほど静まり返った深夜、


彼等はやって来た。


あるはずも無いと思っていた突然の襲撃に村はあっと言う間に灰に帰した。
あの日、
ベッドに潜り込んできた弟の温もりも、
母や父の幸せそうな微笑みも、
村の人達の笑い声も、
今はもう何処にも無い。


そして今、林に身を潜めていた少女は復讐を成すべく、両の手にある冷たい刃〈やいば〉の柄をギュッと握りしめた。
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