Dream・カルマRain

□カルマRain 捜
1ページ/2ページ




海面の月が揺れる。

今夜の海は凪いでいて少年だけが水面〈みなも〉に映る月を歪ませている。
その姿を呆然と見送るマルコとサッチ。そこへ、エースと船医が走ってきた。

「アイツどこ行った!?」
エースの問い掛けにも二人は答えない。答える代わりのように対岸を見つめ続けている。


「………まさか……泳いどるんか?…あの傷でっ!?」
船医が驚きの声を上げた。


幸いこの入り江は海溝が深く、そして岩が突然隆起している。その周りをお情け程度に浜辺が囲っている為、船は常より島に近い位置に停めることが出来ていた。

「あの傷で…いくら凪いでるったって、夜の海……」
「死んだんじゃね?」
とエースがサッチの言葉を引き継ぐ。船医すらその言葉を肯定するように小さく溜息をつく。

だがマルコは違った。

「エース、ストライカー出せ。」
「は!?なんで!?放っとけよ!人質とって逃げるようなヤツだぞ?
それに 今頃どうせっ……っ?…」

『死んでる』そう言おうとしたエースをサッチが止める。そしてサッチまでがエースにストライカーを出すように指示した。



エースが冷たい夜の海を熱く照らし、ストライカーを走らせる。
それを上空から時折指示を出しながらマルコが飛ぶ。

しかし、少年の姿は見当たらない。
マルコはすぐに海での捜索を終わらせた。

きっとあそこに向かってる。

マルコは少年が飛び込む寸前に言った言葉を思い返す。


『確認しなくてはならない事がある。死んでも構わない。だから捨て置け。』


……誰がっ…誰が捨て置くかよい!……


マルコは自分が何故こんなに焦るのか、何故こんなに必死になってしまうのか、自分でも理解出来ずにいた。

でもあの少年の暗い瞳が、あの時の後ろ姿が、胸の奥の『何か』を駆り立てるのだ。


そうしてエースと共に浜辺に降り立った。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ