Dream・カルマRain

□カルマRain 解
1ページ/2ページ




海に浮かぶ大きな鯨は静かに帆を走らせる。
夜の帳〈とばり〉が下りれば空と海の境界はより曖昧に溶け合い、一つの宇宙を形作る。

そんな美しい夜に浮かない顔の男が一人。その背を甲板に預け、睨むように真ん丸の月を見ていた。

最近、反抗期を迎えた末っ子のエースだ。

……マルコも他の奴らもどうかしてるゼ!
何であんなにすんなり受け入れてんだ??……大体『同じで、違う』ってなんだよっ。


先日マルコと話したことをここ何日か考えてはいるが、一体なんの事だかエースには分からなかった。
だから、こっそりサッチにも聞いてみた。そしたらサッチまで
『自分の事は、なかなか分からないって事だな。』なんて答える始末。言われたエースはますます頭を悩ませる羽目になってしまった。
「ハァ………もぉ、意味わかんね。」溜息混じりに寝返りを打つ。

と、小さく扉の開く音がして目を向ければ何と悩みの種とも言えるマチが姿を現した。
それにガバリと起き上がり、また何かやるつもりかと警戒を強めた。


………が、少女は何をするとも無く船縁から下を覗いたり、月を眺めたりしている様だった。


なんだかそんな少女に腹がたった。自分はこんなにも悩んでいるし、お陰で食堂にも行っていない。その上誰も監視に付いてないとは何事か。


「人質とって逃げ出す真似までしといて、よくウロチョロ出来るな。」

エースにしては珍しく、刺々しい問い掛けだった。にも関わらず、驚く様子も見せずに少女はエースに向き直り、地雷を思いっきり踏む。

「…確かに人質をとったのは私だ。だが実際あのナースを危険な目に合わせたのはお前だろう。」
「…………。」
「…………。」

「なっ!!そもそもお前があんな卑怯な真似するか………ら…」

何故だかエースは話し途中にハッと目を見張り、その後口をつぐみじっとマチを見つめている。
「……何を見ている。文句が有るなら最期まで言え。」少女は訝〈いぶか〉しがりながらも、エースをじっと見返した。
その言葉に再度エースは、ハッとして踵を反して船内に戻ってしまった。

……おかしな奴ばかりだな。この船の連中は。

など失礼極まり無いことを考えながら、マチはまた月を見上げた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ