Dream・カルマRain

□カルマRain 奪
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その建物は森の中、この小さな島では異彩を放っていた。

高い鉄の柵がぐるりと囲み、外壁は夜の闇でも浮かび上がる程に白い。上部には神話の女神達のレリーフが施されている。それらが雨に濡れ神々しささえ感じさせるが、その建物に集う者達は、強欲さを下卑た笑いの下に隠す魔物達だ。


そこからハルタが出てきたのは3時間程してからだった。
島に上陸した頃は小雨程度だった雨も、今や本降りを迎え、彼の怒気を孕んだ熱を奪うようにしとどに濡らした。

白ひげに頼まれた物はかなり競ったが、無事に手に入れた。なのにハルタの胸のムカつきは収まらない。会場にいたクズどもを皆殺しにしたい気分だった。

オークションには人も出品されていた。人魚達や、痛みは感じるがどれ程切り刻んでも治ってしまう者。
出品されている物も酷く悪趣味な物ばかりだった。ハルタが競り落とした物はその中でもかなりの《レア物》らしかった。

それを抱え、雨に打たれたがら、一人モビーまでの道を歩く。
そしてあと僅かばかり行けば船に着くという場所で足を止めた。

少し先の、雨に煙〈けぶ〉る人影にハルタは静かに声を掛けた。


「来たね。マチ。」

雨の向こうには、マチが佇んでいた。雨の音に消え入りそうなハルタの呼び掛けに、マチは逆に苛立った声で尋ね返した。

「…………どういうつもりだ。」
「親父が欲しいって言うから手に入れただけなんだけど?」
「それを譲る気は?」
「無いね。……って言ったらどうするの?」


マチはそこで初めて動いた。
ゆっくりと、背にした愛刀を両の手に取る。伝う雨を払う様に一振りして、今にも駆け出そうとした時、


「止めろい!!」
今まで気配を殺して見ていたマルコがマチの前に飛び出した。

それを見てマチは身軽に後ろに飛んで距離をとった。
そうして真っ直ぐにマルコと視線を合わせた。


目の前のマチは殺気を隠そうともしていていない。だがそんなマチを見てもマルコの心を占めている感情は、最初の頃から少しも変わってはいなかった。

『理解してやりたい』
『助けたい』

だが、実際にはそれだけじゃ無い事にも気付き始めてはいたが、今は《それ》を考えるのは後回しだ、とマチに一歩近づいた。


雨足は益々酷くなっていた。
殺気を纏い雨に打たれるマチがマルコには泣いている様に見えた。
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