Dream・カルマRain
□カルマRain 黒
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白ひげの部屋に隊長達、そしてマチが揃ったのは、夜も深まり激しく降った雨も止むかという頃だった。
病み上がりのマチが風邪を引くのは良くないと、断るマチを船医が強引に風呂に入らせたからだ。マルコやハルタもそれに倣った。
今部屋には僅かばかりの緊張が走っていた。
この話し合いの結果次第で、マチが今後どうするのかが決まる事を、皆感じていたからだ。
マチは勿論、他の誰も口を開こうとしない。
そして暫くの間の後、白ひげがマチに話しかけた。
「マチ。俺が最初に聞いた答えは出たか?」
『これからどう生きる』それを白ひげに問われた時、マチは答える事が出来なかった。
だが、今は違う。
再度問われたその質問に小さく頷き返事を返した。
「…あの船を沈めた時、自分の使命は終わったと思った。…でも違った。あの島には《それ》があった。」
とハルタが競り落とし、白ひげに渡した包みを指し、続ける。
「《それ》を全て取り戻す。…私の一族をこれ以上辱める真似は赦さない。」指していた指を、ぐっと胸の前で握り絞める。
その場にいる皆が一様にマチを見つめていた。白ひげもまた、同じようにマチを見つめていたが、常に側にいるマルコ達にだけは判る。その瞳が常より優しく慈愛にも似た色を浮かべている事に。
白ひげは一度手元の包みに目をやり、またマチを見て静かに口を開いた。
「…マチ。お前ぇは、《エル・ドラド》の生き残りだな?」
疑問形で聞いてはいるが、白ひげはそれを確信しているようだ。
そして、その言葉にマチは珍しく驚きの顔を見せた。
そこでサッチが話しに加わった。
「ちょっ、待ってくれよ、親父!話しがまったく読めねぇよ。…それに、《エル・ドラド》って、あの『理想郷に住まう黄金の蝶』ってやつの事か?」
「俺もその話しは知ってるよい。…だがあれは、……お伽話だろい?」と片眉だけ器用にしかめたマルコが問う。
その問いには、マチが答えた。
「…《エル・ドラド》の黄金蝶は、お伽話じゃなく実在する。…ただ、蝶と言っても本物の蝶じゃない。私達の、《瞳》の事だ。」
そう言ったマチの黒い瞳が燈されたランプの炎に揺れていた。