Dream・カルマRain

□カルマRain 哀
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マチの故郷を燃やしたのは、

《バードル海賊団》
船長は《マーデン・バードル》と言う名だと、マチが話しはじめる。


「六年前突然やって来て、村を焼き払い、仲間を根絶やしにし、その全てから目玉をえぐり取って行った。
変色した時に死ぬと永遠にその色を留める事を彼らは知っていたようだ。」
なんだか他人事のように淡々と話すマチが逆に痛々しかった。マルコはマチを見ることが出来なかった。
それでも話は続けられる。そこからの方がむしろ凄惨〈せいさん〉を極めた。

「逃げる間もなく、奴らは私達の家にも勿論やって来た。…まず恐怖と悲しみで瞳を青く濡らした弟が殺された。
そしてそれを見た私も青に変色した。直ぐに殺されかけたが……あの男がそれを止めた。
《マーデン・バードル》。
奴は私を別の部屋で捕らえられていた両親の前まで連れていき……その目の前で…私を汚〈けが〉した。父の瞳は怒りで赤に、母は悲しみで青に。そして殺された。
だが、バードルはそれでは飽き足りず、私はまた元の部屋に戻され、弟の血で紅く染まったベッドの上で……」
そこまで話して、マチは初めて声を詰まらせ俯いた。
だが、手を拳にしてギュッと握り治し話を続けた。
「そして私の背中に、自分の印だと言って《十字》を刻んだ……その後、ある変化が訪れた。
バードルが嬉々として私を見つめた。私の瞳は奴らにとって、かなりの《レア物》だったらしい。」
そこでマチは自虐めいた笑いを零した。

「黒色がそうって事?」とハルタが気遣うように尋ねる。

「…いや、その時の私の瞳は《紫》。
………絶望の…《紫》だ。
バードルはそれが気に入ったらしく殺さずに船に乗せた。」

「バードルって奴に拉致されたって事か…」サッチが誰に言うでもなく呟いた。

「あぁ。でも、すぐに海軍がやって来て交戦し始めた。その騒ぎに乗じて私は逃げる事が出来た。」

「海軍に助けを求め無かったのか?」とビスタが尋ねる。

「助けを求める?海軍は、誰も救ってはくれない。その時々で自らの正義を変える、最も信用ならない奴らだ。」とマチが吐き捨てるように答えた。

そして今度はサッチが尋ねた。
「その後は、どうやって…?」
「……ある島に流れ着いた。そして……ある人に助けてもらった。起きた時には私の瞳は、既に色を無くし黒に染まっていた。それから二年、そこで暮らした。その時にその人から戦い方を学んだ。それから四年間奴らを探した。」
「…そして、沈めたんだねい。」

「奴らは、私から全て奪った。全てを踏みにじった。……弟はっ……まだ…たったの四つだったのにっ……」
最後のその言葉がエースの胸をえぐった。
耐え切れなくなって、トレードマークのテンガロンを深く被り顔を隠した。
そのエースの肩は怒りなのか、悲しみなのか、その両方からか、震えていた。


静かに最後まで聞いていた白ひげが立ち上がりマチの前で膝を付き、あのガラスの瓶を手に握らせた。


そしてマルコ達が驚く程、穏やかな声でマチに話しかけた。

「マチ。お前ぇはやっぱりこの船に乗れ。」、と。
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