Dream・ファントムPain

□ファントムPain 思議
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「ちっ!!」
盛大な舌打ちをするキッドは、ベッドに一人腰掛けて真っ赤な自分の頭をガシガシと不機嫌に掻き毟った。



彼女を自室に連れ込んだ後、キッドはその勢いのまま女をベッドに放った。スプリングを軋ませて直ぐさま覆い被さった。
だがこちらを見る彼女の瞳は、何を考えているのか全くその色を変えなかった。それに多少苛ついたキッドが酷薄な笑みを浮かべて顔を寄せた。


「海賊船に乗るってのは……こういう事なんだぜ。」そう言ったかと思うと、女のシャツに手を掛けて一気に左右に引き千切った。
ブツっと糸が切れてボタンが幾つも弾け飛びキッドの自室の床に雨粒みたいにパラパラ音をたてて散らばった。

そうすれば彼女の顔が恐怖に歪むか、涙に滲むかするだろうと思っていた。
だがキッドが期待している反応は返ってこなかった。

彼女はあらわになった己の肌を隠そうともしなかった。それどころかキッドを見てもいない。

「……オイ、俺を見ろ。」
知らずそんな言葉を放つ。
キッドにとってもそれが何故なのかは判らないが、彼女が自分を見ない事が妙に腹立たしかった。


尚も何の表情も浮かべない女に興が削がれて、女をそのまま備え付けのシャワー室に押し込んだ。



…クソっ、シラけたぜ。

そう悪態をつきながら、キッドはまた舌打ちをした。
普段なら相手の事など気にせず突っ込んでいただろう。嫌がる素振りもキッドを昇ぶらせる。だがそんな気になれなかった。胸の中の得体の知れない何かがキッドの欲を押さえ込んでしまったのだ。

…人形みたいな女を抱いてもつまらねぇってだけだ!

そう心の中で、誰に言い訳するでもなく言った後、手近にあった酒瓶をとり一気に流し込んだ。
やけに苦く感じるブランデーにキッドは少し眉間の皺を濃くした。

扉が小さな音をたてて開いた。そちらを見れば裸の女が立っていた。その足元には既に滴った水が小さな水溜まりを作り始めていた。
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