Dream・ファントムPain
□ファントムPain 歪曲
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柔らかな温もりがキッドを包んでいた。
胸の辺りをサワサワと何かが撫でる感じがして意識が浮上した。片目を開けて首をもたげ、目線を下げれば女が自分に乗り上げて、その頬をキッドの胸に押し当てスリスリしていた。
それを見てボスリと頭をまた枕に沈めた。
………コイツか……ってか起きてんのか?
試しに声をかければ、ガバリといきなり起き上がり自分を真ん丸になった目で見てくる。
朝に眩しい程の女の肌は、陽の光にキラキラと反射しているようにすら見える。胸の膨らみはその先を期待させる程度にシャツから覗き、自分の大腿に跨がって乗っている女の尻はつい触りたくなる位には柔らかだ。
「誘ってんのか?」
ニヤリと笑みを浮かべたキッドは、小首を傾げた女の臀部から腰まで手を滑らせた。途端に女はシャツをかき集めて自分の胸に突っ伏する。
キッドはその仕種に少々驚いた。昨夜、シャワーの後に素っ裸で出てきた女とは思えない程の狼狽〈ろうばい〉振りだった。
……からかった本人に縋〈すが〉ってどうする……
アホなのか?コイツは。そう思いながらも、何故か笑いが込み上げる。
それは女が昨日と違い、驚いてみたり、恥ずかしがってみたりと実に《人間的》だったからだ。
「昨日は平気だったろうが?」
多分にからかいを含んで言えば、女がより一層自分に密着してきてキッドはますます笑いが込み上げたのだが、ハタと我に返って慌てて笑いを引っ込めた。
………何和んでんだっ!?らしくねぇっ!
と心の中で自分を罵った。
わざとらしく眉間にしわを作りキッドは今だ自分の上に居る女を乱暴に退かした。
「退けっ!女に乗られんのは趣味じゃ無ぇ。」
そう言って一気に起き上がった。
すると思いの外自分の身体が軽い事に、キッドは些〈いささ〉か驚いた。
…何だぁ?いつもと感じが……、そこまで考えたキッドの視界に時計が見えた。針は間もなく正午になろうかという時間を指している。
「なっ!?」
あまりのビックリに思わず声が出てしまったではないか。
まさか自分がこんな時間まで眠り続けるとは思いもしなかった。
そういえば夕べは何時頃に寝たのかも思い出せない。気づいた時にはもぅ寝ていた。
そこまで考えて、背後の気配を振り返った。
………まさか…な。
この女のせいかとも思ったがそんな考えをキッドは一蹴する。
「……いつまで間抜けヅラしてやがる。さっさとこれでも着ろ!」
そう言ってキラーからぶん取ってきたシャツを投げ付けた。
もそもそとシャツを着だした女の後ろ姿を見ながらキッドはもう一度自分の中に浮かんだ考えを否定した。
…フン。このオレが、こんな訳の分からない女に振り回されてたまるかよ。