Dream・ファントムPain

□ファントムPain 妖婦
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「……?…う、うわあ!…??」

ガタガタと音を発て、慌てふためきながら少年が立ち上がった。
パサリと足元に落ちたシーツに一瞬視線を落として、また目の前の光景を見返す。

ポカンとしている少年に、こちらに背を向けた男が剣呑な目を向ける。


「見張りがグースカ寝てんじゃねーよ。」


だが、そう言った後すぐにまた背を向け手元をせっせと動かしている。
寝ぼけた頭でイマイチ状況が掴めずに足元に落ちたシーツを手に取る。そして怖ず怖ずキッドの向かいにいるサラに近寄った。


「あの、…これ、サラさんが?」

それにサラが何故だか申し訳無さそうに頷いた。

「ごめんなさい。良く…寝てたみたいだったから。」
「いやっ、サラさんが謝る事なんて無いです!自分がっ、………見張りの癖に寝ちゃったから…………っその、…すみません……。」

勢いよく否定したものの、語尾は完全に意気消沈したものに変わり最後はちらりとキッドを伺っている。

サラが済まなそうなのはその為だった。まだ年若い少年がキッドの横に並ぶと尚の事小さく見える。
そして今は叱られた子犬の様に『しゅん』としているのだ。

…私が勝手に抜け出しちゃったから。

そしてサラまで『しゅん』としてしまっている。


これには流石のキッドもたじろいだ。
元々苦手としているシロに、何故だか強く出れない相手『サラ』が目の前で二人揃って『しゅん』としている。
こんな時キラーがいれば何とかなるのに、と心底うんざりしながらも二人を視界の隅に留めつつ手を動かし続ける。

……しっかし、一体どうなってんだ?

先程からキッドが動かし続けている手に握られているのは包帯だった。

くるくると巻いてはだらりと緩む。強く巻けば痛みの所為でサラが体を固くする。

目の前の二人同様に、この白い布っきれにもうんざりしていたのだが、暫く黙ってそれを見ていたシロが見るに見兼ねて声を掛ける。


「あの、お頭?良かったら自分が巻きましょうか?サラさんの包帯…」

言われてキッドは手にしていた包帯と共にサラの手をシロに差し出す……が寸前、ぴたりと動きを止めた。


「…お頭?」

「………いや、いい。お前は水汲んでこい。」
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