Dream・カルマRain2
□カルマRain 怯
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扉を開けたマルコはそこに居るはずの無い人物を見て目を見開いた。
マルコの部屋の扉の前の壁に片手をついて、半身をもたれ掛ける様にしてかろうじて立っているその人物は横を向き、俯いた顔には何時もはかかるはずの無い黒髪が下がりその表情を伺う事は出来ない。
驚き過ぎて何も言葉を発する事が出来ないマルコに小さく頼りない声が聞こえた。
「……マルコ…良かっ…た…」
……良かった…?
言われた言葉の意味すら考えられなくて黙ったままのマルコに、その人物は尚も話しかける。
「……皆…は、マルコは大丈夫だ、って…言うけど、…一度も姿を…見ないから…もしかしたらって………ハァ、」
そこまで言って限界がきたのか、壁伝いにズルズルとしゃがみ込む。
それを見てマルコが漸く動いた。
「な…に…、っ何やってんだい!?マチ!!」
そう言ってマルコは慌ててマチに駆け寄る。
「俺なら大丈夫だいっ!何でこんなっ…」そこまで言ったマルコは思わず言葉を止めた。
マチが肩に置かれたマルコの手をグッと握ったからだ。
顔は俯いたままで目も合わないが、その手の力は驚く程強い。
「……マチ?どっか痛むのか!?」焦った声を出すマルコに被せる様にマチが口を開いた。
「……んで?だっ…ら」
「マチ?」
「…だったら何で?」
「……?」
「どうして、顔も見せてくれなかった?」
「っ!」
マルコはその質問に咄嗟に答える事が出来なかった。今さっき、ダメな自分を認めたばかりだ。まだそれを晒す覚悟が足りなかった。
その沈黙を勘違いしたのかマチが渇いた笑いを零した。
「私が…余計な事をしたからか?」
「違うよい!」
それには即座に答える事が出来た。何故なら寧ろマチがこんな目に合ったのは自分の所為だ。
「マチ、勘違いするな。俺が」お前をこんな目に、と続ける筈だったマルコの声はマチによって阻まれた。
「私が、……から…?」
「??マチ?何?」余りに小さく、そして震えている声を上手く拾う事が出来無くてマルコは尋ねた。
「私が薄情だからか?」
その質問にマルコは再度黙り込んでしまった。マチの言っている意味が全く判らなかったからだ。
意味を問う様にマルコがマチの顔を覗き込もうとするが、それを嫌がる様にマチは一層顔を背けた。
その仕種に心が痛んだマルコだったが、今はそんな事よりマチを介抱するのが先だ、としゃがみ込んだマチをそっと抱き上げて、足で自室のドアを押し開けた。
室内に入り、パタリと閉まった扉の前でマルコは少しだけ力を込めて抱えたままのマチをギュッと抱きしめた。
マチの体温を感じて、マルコは自分が癒されるのを感じていた。