Dream・カルマRain2

□カルマRain 輝
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小さな明かり取りの窓から優しく陽が差し込み始める。

まだ眠っていたいような、起きてこの久方振りの安眠の理由を確認したいような、相対するジレンマにまどろむ。

どちらにしても幸せには違いない。

そう思ったマルコは、やはり確認したい気持ちに勝てず静かに目を開ける。自分の腕の中で眠る小さな温もりを決して起こさないように。


穏やかな寝息を起てて寝ているマチをマルコは初めて見た気がした。
マチの寝顔を見る時はいつも彼女が傷ついている時だ。浅く、速く、寝苦しそうにベッドに横たわっている姿しか思い出せない。

だが今は安心しきって寝ている。

しかも、自分の腕の中で。
体を重ねてもいないのに、女と朝を迎えるのは初めてだった。否、むしろ朝まで一緒にいた覚えが無かった。例え夜、情事の後で寝てしまったとしても、早朝目が覚めた時にマルコは金を置き寝ている女を残してモビーに帰っていた。
隣に誰か寝ているのが煩わしかったし、朝目覚めて女と挨拶を交わすのも御免だった。
海賊である自分は、良く言っても《その日暮し》、悪く言えば《明日をも知れない身》だ。
愛しい女を側に置くのは無理な話だ。自分から深入り等しよう筈も無かった。否、そう思い込んでいた。

だがマチに出会った。

そして思い知った。今までは、ただ、深入りしたい相手に出会って無かっただけだった事を。

自分の中に、これ程までに他人を知りたいと、理解したいという思いや、女を愛しいと思う気持ちが埋蔵されていた事に驚く程だ。女々しく嫉妬したり、独占したくなるのも初体験だった。

………これが《恋焦がれる》ってやつかねい。

そう考えれば、なんだかいたたまれなくなって、思わず苦笑いを浮かべた。
その僅かな振動に向き合うように寝ていたマチの艶やかな睫毛が震えた。

っまず!
まだこの甘い時間を噛み締めたくて、胸の内で舌打ちしたがマチの意識は浮上してしまった様だ。
しょうがない、と諦めてそっとマチの前髪を梳いてやると漸く瞼を持ち上げたマチと目があった。

マチの瞳の闇は払われ、マルコの腕の中、昇りはじめた朝陽にキラキラと輝いていた。
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