Dream・カルマRain2
□カルマRain 縺
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マーデン・バードルがその島に来たのが偶然なら、時を同じくして白ひげ海賊団が上陸したのは必然か。
それとも、これが『運命』なのか、だとすれば皮肉以外の何物でも無い。
『白ひげ海賊団』
総勢1600人のクルーを束ねる《エドワード・ニューゲート》
そしてその大所帯に見合った船『モビーディック号』
それをこの目で見ようと、男は対岸に登り双眼鏡を手にした。覗いた先に、まさか自分に付いて回る《死神》が写るとは思いもしなかった。
「………あのクソガキっ…」
バードルは自分を強運の持ち主だと思っていた。
6年前、あの村を襲った後、海軍に船を沈められた時も捕まる事なく生き延びた。
そして今、目の前に写るあの忌ま忌ましいガキに船を沈められた時も同じだ。
だが、強運の持ち主は自分だけでは無かったようだ。
吐き捨てる様に呟いた後、バードルはその場を後にした。
モビーディック号とは比べ物にならない自らのロートル船を見上げ、舌打ちを一つ。それに乗るクルーの人数も質も『白ひげ』には太刀打ち出来そうもない。
……まさか、あのガキが白ひげに居るとはな、……くそっ。厄介だぜ。
あのガキは放っておけばいずれ自分の仇〈あだ〉となる。だが白ひげとやり合う力は自分には無い。
あのガキを殺るなら白ひげと断絶させる必要がある。
…………いや、切り札はまだ俺が持っている。まだカードは切られちゃいないんだ。
そう胸の内で呟き、計画を練り上げる。
バードルはさっき脱いだばかりの黒い外套を纏い、自室を出て船内の狭い通路を足早に抜けた。そして帰ってきたばかりの船から飛び降りる。
向かう場所は既に決まっていた。これからの事を考えるとバードルは笑うのを止められなかった。
…あのガキが俺の幸運の女神になるとはな。
そうほくそ笑んでバードルは己の手の中にある切り札を見つめた。
「……勝つのは俺だ。」
男の黒い欲望が、白い雪に足跡を残した。踏み荒らされた純潔をさらに汚そうと、やがて芽吹く緑すら散らすように。