Dream・ゴールデンRule

□ゴールデンRule その1:ベン・ベックマンはツイてない。
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ゴールデンRule
その1:ベン・ベックマンはツイてない。


何処までも続く青い空。
果てしなく広がる青い海。
吹く風は、潮を含み男達を未開の地へ誘〈いざな〉う。
この世の全てを手に入れようと両の手を広げ、親しんだ大地を蹴り高く舞う。
見果てぬ海のその果てに、何が在るかと波に揉まれてその日を暮らす。


そんな男が此処にも一人。今日も波に揺れている。



「あ〜〜〜、海は広いなぁ〜…な?ベン。」
赤い髪を靡かせながら渋面の男を振り返る。

「……………。」
カチャカチャと手元の愛銃を手入れしながらジロリと視線を向けられて、シャンクスは慌てて視線を逸らせた。


大海原を行くは、《赤髪のシャンクス》の船《レッドフォース号》だ。
そしてその甲板に居るのは、


腹を空かせた男達。



「あ゙あ゙ぁ!…んな事より俺達は腹が減ってんだよ!喉が渇いてんだよ!」
叫びながらジタバタと暴れて居るのはこの船の狙撃手《ヤソップ》だ。
彼は海賊には珍しい妻帯者であり父親だった。それも全て陸に置いてきてしまったが、時折思い出しては酒に酔い、何度も同じ話しを繰り返している。妻にしたプロポーズの事や、息子が生まれた日の事なんかを。


「何とかしろよ!頭〈かしら〉だろ!?見ろよっ、このルゥのやつれた顔!」
そう言って指差すのは暴れる元気も無いのか、寝そべったままのルゥ。

この船イチの大食漢だ。いつも両手に骨付き肉を持っているが、今手にしているのは綺麗にしゃぶられた骨だけだ。

「なぁ〜にが『やつれた』だ。いつも通りじゃねーか、それに都合の良い時だけ『頭』、『頭』言うんじゃねーよ。喉が渇いたってんなら酒飲みゃ良いだろが。」

ヤソップに背を向けて胡座をかき、頬杖ついたままでシャンクスが呆れた視線を向ければヤソップが益々暴れた。

「酒はもういらねー!水〜〜〜〜〜!!」
叫びながら足元に転がっていたラムの瓶をシャンクスに投げ付ける。

『ゴインッ』と何とも鈍い音を発てて、見事シャンクスの後頭部にヒットしたのは流石狙撃手といったところか。

「いっっ!!…ってーな!コンニャロ!!」

「…ぁんだよ!このっ、バカ頭が!!」

ボカスカとやり合う二人だったが、それも直ぐにピタリと止んだ。


ガチャ


手入れし終わったベンの銃が、シャンクスの後頭部に押し当てられたからだ。

「……べ、…ベンちゃん?」
シャンクスが恐る恐る振り返れば煙草を吹かしたベンが撃鉄を起こす。

「ヤソップの言い分は尤〈もっと〉もだぜ?お頭。…大体アンタが無計画に宴なんざやるからこうなるんだ。ったく、分かったら大人しくしてろ。」
余計に腹が減るだろうが、と大きなため息をつきベンが座り込む。

それにヤソップが、『そーだそーだ』とシャンクスに追い撃ちをかけた。


いや、シャンクスにだって分かってはいる。
満月だ何だと宴を続け、食料が底を尽きたのはもう三日も前の事だ。幸い酒だけは大量に仕入れる為飲み物はあるのだが。
干上がる喉と空腹には些か堪えるのも事実。
おまけに海王類も姿を見せず、鳥の一羽すら見かけない日が続いている。今ならニュース・クーのカモメですら食べれそうだ。



「俺だって、腹減ってんのは一緒だっ。」
口を尖らせブツブツ言いながら最早泣きたい気分でシャンクスもルゥ同様甲板に寝そべった。
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