Dream・ゴールデンRule
□ゴールデンRule その9:友の為に。
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ゴールデンRule
その9:友の為に。
その島にある小さな村は《フーシャ村》と言う。
気の良い村長と穏やかな町の人達。美味しいツマミを出してくれる酒場には、マキノさんと言う明るい女性。そしてそんなマキノさんに懐いているルフィと言う名の少年。
いつもただ飯を食べては『宝払い』なるもので、ツケているらしい。
そしてその少年こそが、《悪魔の実》を食べゴム人間になった少年だ。
本人は気に入っているらしいが、村の人には面白がられているそうだ。
「ま、ポジティブなのはアイツの唯一良いところだ!」
と、ダッハッハと大口開けてシャンクスが笑う。
「…誰かさんと、同じじゃないですか。」
リツが呟いたそれにベンが頷く。
「どうりで、気が合うわけだ。」
「あ?誰が何だって?」
二人の小さな呟きが聞こえていたのか、シャンクスが胡座を掻きながら凄んで見せた。
甲板にクルー達の笑いが起きた丁度その時、マストの見張りが叫んだ。
「おーーーーい、島だぞっ!フーシャ村だ!」
その声にシャンクスと、リツが船縁に駆け寄る。
「あれが、フーシャ村…ですか。」
「おう!あれが、フーシャ村だ!久しぶりだ…。」
そう言って嬉しそうに目を細めるシャンクスが少年の様に見えて、リツはまた、小さく笑った。
そんな二人の後ろ姿を見て、笑う者がもう一人。
気に入りの煙草を吹かすベンだ。
………くっ。似てるってんなら、お頭とお嬢ちゃんもな。
そう胸の内で笑った。
港に着いて直ぐ、シャンクス達は島の異変を感じ取る。
いつも一番にやって来るルフィが居ない。
「…っかしいな?何時もは直ぐにやって来ちゃ、うるせぇぐらいまとわり付くんだが………」
「…やけに静かじゃねぇか。」
クルー達の話を聞きながら、シャンクスが港に降り立ち、町の方に足を向ける。
それをリツは不安な気持ちで見ていた。
船縁をぎゅっと握り、隣に立つベンに小声で話掛ける。
だが、その目線は町へと遠ざかるシャンクスを捉えたままだった。
「…ベックマンさん、…嫌な予感がします。………シャンクスさんを行かせてはいけません。」
しかしそれを聞いたベンは何も答えなかった。それどころか、ベンも又、船からヒラリと降りてしまった。
「ベックマンさん!?」
リツの咎める様な声に振り返るベン、船からは一人、又、一人とクルー達が後に続いた。
「…分からないんですか?今何かあれば、それはシャンクスさんにとってどんな些細な事でも、《死》に繋がるんですよ!?」
「………だがあれが、俺達のお頭なんだ。あれが、《赤髪のシャンクス》って、男なんだ。」
そう言ってベン・ベックマンはニヤリと不敵に笑って見せた。
遠ざかる男達の背中。
そのどれもに、強い覚悟を感じた。
リツは動けない。
「………どうしてっ、……」
こんなにも胸が熱いのに。
こんなにも命が滾〈たぎ〉っているのに。
何故、彼等は失わなければならないのか。
彼等はもっと高みにゆける。
彼等はもっと………。
「…どうして、」
先程と同じ言葉を口にする。
一度目はその背を見送った男達に。
二度目は自らの神に。