Dream・ゴールデンRule

□ゴールデンRule その11:星を数える男は欠けた月を抱く。
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ゴールデンRule
その11:星を数える男は欠けた月を抱く。



「…………ぅん、………」

重く怠い頭を振りながらシャンクスは起き上がった。

気づけばそこは何とも奇妙な空間だった。


何処までも広がっているようにも思えるが、閉塞感を感じる。

風が無いのだ。
潮の香りも、生き物の気配も感じない。

真っ白で、無音の世界。



…………、そうか、オレは

「………死んだのか。」

そう呟いては見たものの、何だか実感が湧かない。

…なんちゅうか、呆気ないもんだな。

ポリポリと頭を掻きながらガックリと項垂れたが、そう言えば貫かれた筈の胸の痛みが無い。
刺された胸元をばっと開いて確認すれば、やはりそこには傷など無かった。

「おぉ〜!すげぇな。」

まるで手品を見た子供の様な声を上げるシャンクスに、クスクスと笑い声が聞こえた。


目を凝らせば、真っ白な空間だと思っていたがただ白いだけでは無かった。
小さな、小さな光の粒があちらこちらを舞っている。そしてその奥から見知った顔が姿を現した。


「リツ!」

「はい、シャンクスさん。元気そうで何よりです。」

そう言ってクスクスとまだ笑うリツにシャンクスも釣られて笑う。

「おう、死んでんのに『元気』ってのは変だけどな!」

ガシガシと頭を掻きながら苦笑いを浮かべるシャンクスにリツが首を振る。


「…いいえ、シャンクスさん。貴方は死んではいません。」

「…?だが、俺は……?、それに此処はあの世ってやつなんじゃ無いのか?」

「近からず、遠からずって所ですかね。」

「じゃ、やっぱり死んで…」

「いいえ。」

シャンクスの言葉にキッパリとリツが否定する。



「いいえ、シャンクスさん。
     貴方の運命は更新されました。」


「な…に、……」

静かな声に、シャンクスはハッとする。

「何言ってる!お前は俺を連れていくんだろうが!?」


そして思い出す。
意識を失う一瞬に感じた、彼女の優しい口付けの事を。

「っ、まさか、……」

シャンクスの考えを肯定するかの様にリツが微笑んだ。

あちこちに散らばっていた光の粒がリツを中心に集まりはじめる。


「っ!違う!そんなのは無効だ!!俺を連れていけ!」

既にシャンクスの視界からぼやけはじめている彼女の手を膝立ちのまま掴み、誰に向かって言えば良いのか分からないまま叫んだ。


「最後まで、無茶苦茶な人ですね。貴方は。」

穏やかに笑むリツにシャンクスの胸は締め付けられた。

「…っ何で、こんな事!?」

「……きっと、貴方が私なら、そうしてくれたと思うから。」

「…リツ、」

「そうです。それが、私の名前です。」


彼女の名前。
二人の不文律。

この世界で、
1番優しく、そして容易くは無い。



《Golden rule》



人が解くべき、神への方程式。




「…運命が更新されたなら、またお前が見張っていれば良い!」

「もぅ、行かなくちゃ。……神様が呼んでる。」

集まり始めた光の粒がリツを薄れさせていく。

「待てっ!往くな、リツ!!」

「さぁ、立って!自分の足で戻るんです!だ……な……ちが、…待っ……!」


シャンクスの意識がグンっと、何かに引っ張られてリツから離れていく。


「往くな!!っ往くなぁぁぁぁ………」




リツの声も、シャンクスの声も吸い込まれていく。




やがて光は一点に収束して、


パチン、と弾けて消えた。
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