Dream・カルマRain

□カルマRain 炎
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一人で海賊船沈めるなんざぁ…はなっから無理があるだろぃ………さて、どうするかねい…

と、緊迫した船上の雰囲気とは正反対にマルコは両のポケットに手を突っ込んだまま岸壁から下を見ていた。

赤く血塗られた船上ではその海賊団の船長だろうか。周りのクルー達より前に出て、少年に向けて何かがなっているようだ。


…まっ、がなりたくもなるわな。

マルコは(余計なお世話だが、)海賊達に同情する。
自分も海賊だ。
絶対有り得ないが、
手前ぇの『誇り』が、
心に掲げている『ジョリーロジャー』が、
そして何よりも船長である『親父』が、あんなガキに馬鹿にされたと思えば、やりきれない。

そんな思考に耽りつつも、マルコの目は少年を捉え続けていた。
その時、少年がまるで『降参だ。』とでもいう様に両手を突き出し、自らの刀からゆっくり手を離した。

刀は意志を無くし甲板に、ゴスっと鈍い音をたてて突き刺さった。


その瞬間
凄まじい爆音を響かせて船尾付近の甲板に備えられた小さな扉が吹き飛んだ。それを合図に船の至る所から爆発が始まる。

船上はまさに『阿鼻叫喚』。
海賊達は、爆発に巻き込まれて吹き飛んだり、火に巻かれている者たちで溢れかえる。


……っ!!!
なんてヤツだよい…一人で沈めちまいやがった。

マルコは不死鳥に姿を変え羽ばたき一つで岸壁から飛び立つ。
きっとこの火柱はモビーからでも爆発だ、とハッキリ判るだろう。
白ひげに報告しに行くべく、マルコはモビーに進路を向けた。

ふと、そこで波打際に人影を見つける。

爆風で飛ばされたか…と、チラリと見やれば、倒れているのは昼間の少年だった。
不死鳥のまま、マルコはすぐ側に降り立つ。

仰向けに倒れてピクリとも動かない。肩には船の木片が深々と刺さっている。
死んでいるのかと、獣化を解き、少年の頭をつま先で小突いてみる。
「……ぅうっ…」
と小さく呻いた。
少年は死んではいないようだった。
マルコは一瞬逡巡したが、再び獣化し少年を鷲掴み、側にあった少年の二振りの刀をくわえて今度こそはと大きく羽ばたいた。


眼下には真っ赤な炎が勢いよく燃え、今だ続く爆発音が夜の闇を震わせていた。
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