Dream・カルマRain

□カルマRain 蒼
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始まってしまえば、後はもう夢中だった。
何故こんなやつらに、と思うほど弱かった。
六年前のあの日、自分が今ほど強ければと噛み締めた唇に血が滲む。


およそ半分ほど仕留めた頃を見計らい、形勢不利を装って船首まで移動する。

暫く自分を囲む海賊達と睨み合う。すると、忘れもしないあの男が歩み出てきた。


「しつこいガキだぜ!
それとも、なにか?また俺の船に乗りてぇのか?今から新世界目指すって時に、
こんだけ殺られちゃたまらねえからなぁ!タダでは帰さねぇゾ!!コラァ!!」


その男の言葉を少女は渇いた笑いで返した。


…元よりそのつもりは無い。自分は此処で死ぬ。それが『全てを終わらせる』という事。

それが彼女の覚悟だった。
軽く息を吸い、男を見遣る。その瞳は夜の海そのものの色をしている。

少女が口を開き、はっきりとした口調で放つ。


「まだ判らないのか。
この船はもぅ何処にも行けやしない。…お前の墓標だ。」

その言葉に男が激昂する。
「っふざけんなぁ!!数見てもの言いやがれ!」

あとは負け犬よろしくの決まり文句をがなり立てている。

心底嫌気がさした。もう此処には一分一秒だって居たくない。この男を生かしちゃおけない。

そして彼女は静かに目を閉じた。
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