Dream・カルマRain

□カルマRain 醒
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その日の夕方、
自室で前の島での収支報告やらの書類処理に没頭しているマルコに、待ち望んだ時がやって来た。


「あの子が目を醒ましたそうだ。」

と、たまたま医務室の前を通ったビスタが船医に頼まれてやってきた。

「………………」
「………………」
しばし無言で見つめ合う。

「………マルコ?行かなくて良いのか?」

言われたマルコは、ハッと我に返り、逸〈はや〉る気持ちを抑えつつ、ビスタと共に医務室に向かった。


医務室に入ると、少年はその身を起こし、壁にもたれる様にベッドの上に座っている。その顔色は余り良いとは言えないが、マルコ達の足音に気づいて酷く緩慢な動きで顔をあげる。

そして、マルコと視線を合わせる。


その瞬間、マルコはやはり自分の胸の奥の《何か》が鳴るのを感じた。


しかし視線は長くは合わなかった、首を上げているのが辛いのか、少年は俯いてしまった。

マルコが少年に近寄る。
すると少年は酷く掠れた声で「また、お前か。」と呟き鼻で笑った。


起きて直ぐの言葉がそれか、とマルコは苛立った。

「…助けてもらって礼も言えねぇのかい?」

少年はそれには答えずに次の質問を投げかけた。

「お前達は、海賊なんだろう?」
「…それがどうしたってんだよい。」
「………《海賊》が、人助けのつもりか……私は『捨て置け』と言った筈だ。」

それを聞いたマルコはついにぶちギレた。
少年の言う《海賊》には侮蔑の色がありありと滲んでいた。
確かに、《海賊》だ。
だが、だからといって他の奴らと一纏めにされるのは我慢ならない。コイツこそ俺達の何を知ってるんだと、勢いに任せて少年の胸倉を掴んで引き揚げた。
少年は痛みにぐっと眉を寄せるが、知った事じゃ無い。とばかりに締め上げる。
「確かにねい。名前も知らねぇガキが死んだところで、胸の一つも痛まねぇない。何ならまた海に放り込んでやっても良いよい。」と睨みつける。



そこへ包帯を換える為か部屋に入って来たナースが、マルコの所業を見てぎょっとして直ぐに二人を引き離すように走り込んでくる。

「マルコ隊長!止めて下さい!!相手は怪我人だし、《女の子》なんですよ!!」


「………は?」

「だからっ!放して下さい!!」
「…今何と?」
混乱してその機能を停止しているマルコの代わりにビスタが尋ねる。
「こんな小さな《女の子》に乱暴するなんてっ!止めて下さい!」

ナースの叫びも、もはやマルコには意味を成していない。

《オンナノコ》

その単語だけがやけにハッキリ聞こえた。
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