Dream・カルマRain

□カルマRain 未
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そして案の定、白ひげの笑い声がモビーを震わせた。

マルコは、それに『はぁ〜〜〜………』と、深い溜息をつく。
「今日はえらくご機嫌だねい、親父。」
「なんだぁ?ハナッタレ〜そりゃ嫌味か?」

…嫌味ぐらい言いたくなるよい。

「息子だと思ってたのが娘になるなんざぁ〜思いもしなかったからなぁ!!!グララララ!!」

「…………。」
「…どうしたぁ?こんな良い夜に憂かねぇ面しやがって。」
「……親父、あいつは、《海賊》を恨んでやがるよい。それも尋常じゃなく…。」


「マルコぉ。そいつを此処へ連れて来い。」
「…………。」
「…マルコ。手前ぇが連れて来るんだ。今すぐにな。」



白ひげの元に少年……いや、《少女》を連れていくのには少々手間取った。船医がまだ無理だとマルコに詰め寄ったからだ。
しかし《少女》が無言で立ち上がった事でようやく許可が下りた。
その後も覚束ない足取りでゆっくりと進む為にまた時間を取られたが、ようやく白ひげの元までやってきた。



「よぉ…お前ぇかマルコが連れて来やがったってのは。オレはこの船の船長、エドワード・ニューゲートだ。………名前は?」


「…………マチ。」


「そうか。…で、マチ。海賊嫌いらしぃじゃねぇか?船を一人で沈めっちまう程のなぁ。」

「それがなんだ。気に喰わないなら殺せ。」
先程までフラフラと歩いていたとは思えない、ハッキリとした口調でマチが返す。

それを聞いて白ひげはまた大きく笑った。
「グララララ!《死にたがり》を殺しても面白くも何ともねぇだろがぁ?
それにお前ぇみたいのは嫌いじゃねぇ!……だから娘になれ!!」

「……娘?」
マチは先程よりも険しい目で白ひげを見遣った。
だが白ひげはその目線にすら愉しそうにしている。
「この船に乗ってる奴らはオレの息子達で家族だ!お前ぇも今日から、白ひげを名乗れ!オレの娘としてなぁ。」

その言葉にマチは怒りを隠そうともせずに言い放つ。

「お前等のような《海賊》風情がっ!家族だと!?
ふざけるな!!お前等《海賊》は、奪って、壊して、殺すだけだ!!そんな奴らに…家族の何がわかる。私は…、わたし…は…」そこまで言ってガクリと、膝から崩れ落ち、荒く呼吸を繰り返す。今まで顔に出さなかったが、やはり身体に相当負担があったのだろう。
だが少女は、それでも白ひげを睨み続けた。

白ひげは立ち上がり、少女の顎を掴み上向かせる。
「家族を奪われた復讐か?それで奴らを沈めた。」
「…そう…だ。《海賊》には似合いの最期だろう…」
「……で、この先、お前はどう生きるんだ?」


言われて少女は目を見張った。


……この先……どう生きる?

少女はその質問の答えを持っていない。自分に先があるなんて考えた事もなかった。

…そして、未来を想像した事も。
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