Dream・カルマRain2
□カルマRain 帳
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暫く何気なく歩いていたマルコだが、マチが黙って自分に抱き上げられているのに違和感を感じた。
今までなら、こうして運ばれるのを嫌がっていた。その上、今から行くのはクルー達が待ち構えている甲板だ。
体調が優れないのか、と心配になりマチを見下ろす。その瞬間マルコの口許が弧を描いた。
真っ赤になったマチがギュッと目をつぶっている。
……なんだこの可愛い生物は。
思わず口に出しそうになるのをマルコは寸での所で堪えた。でもやっぱり可愛すぎてつっ突きたくなるのは仕方ない。
「…熱でもあるのか?真っ赤だよい。」
ワザとそう言えばマチがマルコを見上げた。
「ちが…っ」
違うと言いたかったのにマチの言葉はマルコに食べられてしまった。
否定するのに慌てて顔を上げたマチにマルコが正に『カプリ』という具合に口づけた。
姫抱きのままマチを少し持ち上げて、マルコが首を曲げてキスをする。突然過ぎる深い口づけにマチは息も継げずに赤い顔をより紅潮させる。
マルコのキスは、何時もマチを翻弄する。
優しくあやすみたいに下唇をはんだかと思えば、熱い舌が全て奪い尽くすみたいに侵入してくる。そうされると、自分とマルコの境界さえもぼやけてしまって他の事は考えられなくなってしまう。
「……ン…」
小さく漏れるマチの声にマルコは愛しさを募らせる。何時までも慣れない不器用さがマルコの胸を焦がすのだ。
優しくしたい。
だけどそれと同時に全てを奪ってしまいたい。自分の事しか考えられなくしてやりたい。
…俺がいなくちゃ生きて行けない位、ダメになれば良い。
人を愛するという事が、これほど獰猛〈どうもう〉で加虐的だとは思いもしなかった。だけど最後はやっぱり優しくしてやりたくて、マチの唇を甘く噛む。するといつもマチは漸く息を吐く。
慣れない仕種で呼吸するマチの吐息がマルコをいつも離れがたい気持ちにさせるから尚更にタチが悪い。
少し離れた距離に安心したのか、瞳を開けて自分を見るマチに、やっぱり加虐心を擽〈くすぐ〉られて、濡れたマチの唇をマルコがぺろりと舐めた。
「………悪い。また赤くさせちまったねい。」
クスクス笑いながらマルコは今度こそと、酷くゆっくりとした歩調で甲板に向かった。