Dream・ゴールデンRule

□ゴールデンRule その8:貴方は貴方らしくその時を迎える。
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『それは、違う。』

否定された言葉が、何を否定しているのか分からなかった。

あの時の私は、まだ何も解っていなかったのだ。

人間の事が、

彼等の事が、

そして、

…彼の事が。





「俺が、…俺達が、一体何者かを忘れちまったのか?」

「……一体何の事ですか。」

先程とは違う、彼女の静かな疑問にシャンクスが答える。

「俺は、《海賊》だ。」

呆れた答えにリツが溜め息をついた。

「そんな事は知っています。」

「…なら、どうやって生きてきたか、どんな風に生きるのかも知ってるか?海賊って人種が。」

「………。」

「言葉で言うのも、頭で理解するのも、実際にそうやって生きるのとは違う。……だが、俺は海賊だ。ま、確かに人に誉められる様な生き方じゃ無い。」

その言葉に、後ろに居たヤソップ達がやんや言いながら笑う。

「…奪う者は奪われる。殺す者は、いずれ殺される。今更、そんな生き方を悔いるつもりも無ぇ。実際、好きでそうやって生きてきたんだ。…ただ、《その時》が来たってだけだ。だから俺が死ぬのは、お嬢ちゃんの所為じゃ無い。…って、前も似たような事言ったか?」

ヘラっと笑って見せるシャンクスにリツは自分の小ささを悔いた。

目の前の男の生き様を側でずっと見ていたい。熱くなる胸を知られたくなくて思わず押し黙る。

「………。」

「…だからもう無視なんかして、俺達をイジメるのは止せ。」

優しく響く声に、それでもやっぱり素直になれずにぶっきらぼうを装う。

「……いい加減、『お嬢ちゃん』は止めてください。」

「………ぶはっ!そうだったな、ハハ!お嬢ちゃんはダメだったな、ハハハッ!」

一瞬きょとんとしたシャンクスが声をあげて笑いだすと、甲板が賑やかに震えた。




その島を拠点にしてどれ位だったか、定かじゃ無いがとにかく長い期間な事は間違いない。

「…俺達もこんなだからよ?あんまり長い事同じ島に居ないようにはしてるんだが、…居心地が良いってのもあるが、面白いガキが居てよ?ソイツ、俺達の持ち込んだ《悪魔の実》を食っちまって…」

そう言ってシャンクスがくつくつと笑えば、ヤソップが続けた。

「ゴムゴムのゴム人間になっちまった。」

そこでシャンクスが本格的に笑い始める。

「だっはっは!カナヅチにまでなったってのに…くっ、船に乗せろ、俺も海賊になるって聞かねーんだわ、ハハッ!」

眉尻を下げ、シャンクスが甲板にひっくり返り呆れたように笑う。だが、その裏には少年に対しての情が見てとれる。
それを見て隣に座るリツも小さく笑った。

「………。」

「………。何ですか?」

視線を感じてリツが笑顔を引っ込めた。不機嫌な振りで訊ねればシャンクスが頭をもたげて頬杖をついて尚も見つめてくる。

「………。だから、何なんです?」

耐えきれずにもう一度訊ねればシャンクスがフッと笑う。

「……いーや?笑った顔も可愛いなって、思っただけだ。」

「ッ!」

驚いた顔のリツに小さく笑ったまま、シャンクスは甲板に大の字になる。


彼女の不機嫌な振りが、照れているからと分かるようになったのはいつからだったか。





天が海の色を写している様な、そんな雲1つ無い澄んだ青空。

その青に、彼女が降りてきてから6度目の太陽が輝いていた。
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