Dream・ゴールデンRule

□ゴールデンRule その9:友の為に。
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『友達を傷付ける奴は許さない。』


そして、シャンクスはその腕と引き替えにその小さな友を助けた。

『安いもんだ、腕の一本くらい。』

そう言っていつものように笑った顔は何一つ失ってはいなかった。




船出の時がやって来る。


小さな島の、
小さな少年は、
片腕の大きな男と同じ夢を見る。

抱いた夢はきっと少年を大きく成長させるだろう。

おそらくは、シャンクスが残す最期の軌跡。

『海賊王になってやる!』

言い切った少年の顔は、既にシャンクス達と同じ『覚悟』を持った男のソレだった。



波を切る音は常と変わらない。
しかし甲板の男達は誰も口を開かずにいる。


静かに『その時』が近づいて来た事を、誰もが感じていた。



フーシャ村が完全に見えなくなった頃、ベンの「お疲れさん」の言葉が合図だったかの様にシャンクスが甲板に沈んだ。ヤソップと、近くに居たクルーが部屋に抱えていく。
リツがその後に続いた。

額にヒヤリとした感触、シャンクスがうっすらと目を開けた。

「……ん、…ここは、」

熱に浮かされ意識が朦朧としているのかシャンクスは既に自室かどうかの判別もつかなかった。

ただ、傍にリツが居ることだけは分かる。

気配なのか、何なのか。

分からないが彼女の存在に安らぐ感覚にシャンクスは仄かに口角を上げた。

「…こんな時にも笑うわけですか。まったく貴方と言う人は。」

呆れ気味に聞こえるその声も、今はシャンクスをただ安らがせるだけだ。


『……最期まで、居てくれ。』

胸に浮かんだ言葉は、声には出せなかった。

なのにリツが応える様に少し冷たい、その小さな手で優しくシャンクスの目を塞いだから、

また少しだけ笑った。

「…眠って。……私が傍で、こうしていますから。」

抗うことなくそのままシャンクスは意識を手離した。



「………お頭は?」

シャンクスが眠ったことを確認して出てきたリツにベンが静かに訊ねる。

「…今は、眠っているだけです。…ですが、」

そこから先がどうしても口に出来なくてリツは思わず俯いた。

そんな彼女の肩にベンが軽く手を充てた。はっとして顔を上げれば、いつも通りのベンがいた。

「ありがとな、リツ。」

思いもよらない台詞にリツが目を瞠〈みは〉る。

「…何…が、」

ぼんやりと問い返した声に今度はヤソップが答えた。

「リツならお頭を任せられるからよ!」

「おー、ソレだソレ!あの人、アレで方向音痴だからよ?」

ルゥの言葉にクルーが笑って同意する。

しかし、そんな束の間の時間も与えてはくれないのか、リツは海の異変を感じとる。
いつもの船首部分に駆け寄ったリツにクルーが声を掛けた。

「どうした?」

「……火薬と、血の匂い。」

そして呟きのあと、振り返る。

「船が来ます。海軍か、海賊か。…とにかく商船じゃ無いのは確かです。」

するとそれを聞いたベンがニヤリと笑う。

「…最期の最期まで、ったく。…だが、…俺達らしいじゃねぇか。
……野郎共!お頭に最高の餞〈はなむけ〉だ!!派手に暴れてやれ!!」

ベンの号令に皆一斉に声を上げる。



不敵に笑う彼等は《赤髪海賊団》そのものだった。
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