跡日。
□甘えたな彼
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跡部さんが熱を出した。しかも39度という高熱。だから、そんな彼のために見舞いに行くことにした。
相変わらず大きい屋敷に驚く。しばらくすると、跡部さんの執事さんが出てきた。
「日吉様、ですね?」
「あっ、はい。部屋、入ってもいいですか?」
「誠に申し訳ございません。日吉様だけは部屋に入れるな、キツくいわれておりまして…」
「…大丈夫です。理由は俺が話しておきますから」
「…かしこまりました。こちらへどうぞ」
跡部さんの部屋に案内される。案内人がいなくなり、俺はそっと扉を開いた。
「失礼します」
返事は返ってこない。寝ているのだろう。ベッドに近づくと、跡部さんの少し苦しそうな寝息が聞こえた。いつも白い肌は余計に白くなっていて、頬は上気している。時々汗を拭いているが、すぐに出てきてしまう。
「俺が…代わってやりたいな…」
しばらくすると、跡部さんが目を覚ました。
「ひよ…し?なんで?」
「執事さん達を怒らないでくださいね?俺が勝手にここまで来たのですから」
サラサラとした金髪を撫でながら答えた。まだ跡部さんは眠いようで、ボーっと天井をみている。
「ここまで弱っている跡部さん…初めて見ました」
「そろそろ、帰れ。うつっちまうから」
「…うつったら、看病してください」
「ははっ…それも、いい、な」
だんだんと跡部さんが目を閉じていく。
「わかし…」
「なんです?」
「手、握っててくれ」
「いいですよ。おやすみなさい、景吾さん」
完全に跡部さんは寝てしまったのに、手を握る力だけは緩めない。そんな様子に、俺は自然と笑みがこぼれる。
「甘えたなんですから…」
そう呟いて、跡部さんの手を握りながら、俺も眠りについた。