テニプリパラレル。
□これが残酷な「運命」
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「宍戸…そこ、動かないでね?」
「滝…っ!やめろ!」
森中に響く俺の声。すでに肩はうたれていて、鮮血がジャージを滲ませている。痛くてなかなか思うように動けない。怖い。人は自分の身に危険が迫るとこんなにもひょうへんしてしまうものなのだろうか。今の滝のように。美しい髪はグチャグチャ。あんなに毎日のように手入れをしていた爪は、艶さえ見えない。
「宍戸、俺はもうイヤなんだ。好きな人が傷付くのは…。だから、せめて俺の手で…っ!」
滝が叫んで銃の引き金を引く。目をギュッと瞑るが、続く痛みは襲ってこない。おそるおそる目を開くと、目の前には血まみれの長太郎がいた。
「長太郎!」
「あっ…おお、とり…」
滝が絶望の色を見せる。
「長太郎!おい!」
「しし、ど、さん…大丈夫、ですか?」
「しゃべんな!」
「いや…言わせて、ください。宍戸、さん…いいえ、りょー…好きです」
そのまま、長太郎は微笑んで静かに眠りについた。永遠の…。
「…ねぇ」
「…な…に?」
「許さねぇ!」
「し、宍戸!やめっ………」
記憶はなかった。気がつけば、血まみれの滝がいた。手に生暖かい水。赤い。
「俺が…俺が殺し、た?」
その時、俺は気づかなかった。後ろに誰かいたことに。ナイフで刺されたのはすぐのこと。ぼやけた視線を送れば、涙を流しているジローが見えた。
「ど、して…?」
「ごめんね…亮ちゃんっ、本当に…ごめん!」
ジローは、最後に言った。
天国で、長太郎とお幸せに…
end