土沖。

□止まない雨
2ページ/4ページ



攘夷志士達が町を彷徨いていたとの情報が入り、その日は一番隊のみが現場へ向かった。いつも通り総悟にそっけなく手を振り、いつも通り帰るのを待っていた。

しばらくして、近藤さんが切羽詰まった様子で部屋の襖を開けた。

「トシ、大変だ!一番隊の応援に今すぐ向かうぞ!」

「なんだって!?わかった。すぐ行く」

短く返事をし、刀を手にとってすぐに屯所を出る。現場に着くと、生臭い血の匂いがした。そこには何人かの攘夷志士と一番隊員が倒れていた。すでに息はしていなかった。近くに総悟はいなかった。辺りを見回し路地裏を覗くと、血まみれで壁に背中を預ける総悟がいた。

「おい、総悟!大丈夫か!?」

「土方、さん?」

総悟は今にも消えてしまいそうな声で問いかけに答える。

「ひじか、た、さん。俺はもうダメっぽいでさァ…」

「何馬鹿なこと言ってやがる!」

「わかるんでさァ…身体がうんともすんともいわねぇ」

「んなもん病院行きゃ治る!」

「残念。そんなに長くは…保たないでさァ。雨、すごく冷たいですねィ…あっためて下せェ」

「っ!」

俺は総悟に言われたとおり、力強く抱きしめた。
 
 
 
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ