old clap
□old clap
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気付かれないように細心の注意をはらっていたはずなのに。
目の前には私より遥かに大きな彼が立ちはだかっている。
「ずっと見てたでしょ、僕のこと。」
私はさっきから彼に尋問されている。
「や、やだなぁチャンミナ、見てなんてないったら。」
「嘘だね。天才の僕が気付かないとでも思った?」
彼の射抜くような視線が私に刺さる。
バレてはいけない。
ただのスタッフの私がスーパースターに恋をするなんて。
自分の馬鹿さ加減にほとほと呆れながらも、一度火が点いた気持ちは止められなかった。
成就するはずなんてないから、それならせめて、そばにいられるこの関係を保たなければ。
そう思って毎日平静を装っていたのに。
いたはずなのに。
「無意識に見てるんじゃない?僕のこと。」
チャンミンは飄々と。
こんな自意識過剰発言も、彼だから許される。
ジリジリと距離は縮まり、私は遂に壁際に追いつめられた。
「チャンミナ!近い…!」
このままでは心臓が保たない。
ドアに手をかけようとするが、彼の長い腕に阻まれた。
「僕を見てたって認めるまで、ここから出さない。」
彼に見つめられて、意識がジワジワと遠のいていく。
「いつも見てるくせに、今は見ないんだね。」
彼は不敵に微笑んで、私の顔を無理矢理自分の方へ向ける。
色んな感情が入り乱れて、私の目からは涙が溢れた。
「泣いたってダメ。」
そう言って親指で私の涙を拭う。
「泣くほど好き?僕のこと。」
私はもう、頷くしか出来なかった。