短・中編置き場

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生徒会室は何時もと変わりなかった様に見えるが庶務の席付近だけは物やプリントが散らばっていた。

天津は不意を付かれて襲われたのかもしれない。

不意を付くに適任な人物が目の前に居るのだから。


「おい、片割れはどうした雷?」
「……連れて行く、夢艶様の……元へ」


パチパチと雷の周りに稲妻が走る。
あんなのを食らったら火傷だけで済む気がしない。


「目が虚ろだな、本当に洗脳されてるっぽいな」
「きます!」
「ヌオッ!」


瑛良は天津(分身)に引っ張られる。
元居た場所に稲妻はパチンと鳴り床と落ちていた紙が真っ黒く焦げていた。
それを見た瑛良は目を瞠目させ顔を青くさせた。


「あんなの食らったら死ぬだろ?!」
「いえ、気絶程度かと」
「光が見えなかったんだが!」
「私には見えますよっ、」
「オワッ!ちょっ、お前ら部屋を散らかすな!焦がすなぁぁぁあ!」


瑛良を抱えて避ける天津。
だか避ければ避けるほど生徒会室は荒らされ酷くなってゆく。
その様は瑛良はさらに血の気が引く。


「お前ら!仕事を増やすな!まだ体育祭は終わってないと言うのにっあぁぁぁあ!纏めた資料がぁぁぁぁぁあパソコンがぁぁぁぁあ!」
「瑛良様お静かに!舌噛みますよ!」


そう言われても破壊されていく様を見て叫んでいられない。


「くそぉぉお!紅太郎屋上だ!屋上なら避雷針が有る!」
「屋上に行けば風も加勢しますよ!」
「あぁ!くそっ……」


どうする?どうすれば稲妻から抜けられる?それか雷を気絶させることが出来るのか……

ふと、天津の指を見ると指輪を発見。
きっと記憶を失う前に贈ったプレゼント、だと思う。


「紅太郎、その指輪を雷に向かって投げろ」
「えぇ?!」
「雷がこっちに向かって放電した瞬間を狙え。雷の前で止めて気絶させる」
「……嫌です」
「紅太郎!」
「嫌です!この指輪は瑛良様から貰った大切な指輪なんです!」
「また贈ってやる!」
「嫌です!私は、この指輪じゃないと嫌です!それに瑛良様にとっても大切な指輪なんですよ!」
「良いから!俺達が焼け焦げるぞ!」
「嫌です!」


俺達が焼け焦げるよりも大切な指輪って事かと瑛良はじっと指輪を見た。
記憶を失っている今、指輪がどれだけ大切な物なのか解らない。どう大切なんだろうか……まぁ、後で聞けば良い。


「……そうか、悪かったな」
「ごめんなさい、この指輪だけは本当に駄目なんです」
「あぁ、俺もそんなに大切な物だと知らずに……すまなかった」
「瑛良様……」


天津と瑛良が見つめ合う。
そして数秒後、ん?と瑛良様は異変を感じる。
気のせいか「指輪を投げろ!」と言った辺りから稲妻が飛んでこない。

天津と唇が重なる寸前に雷を横目で見てみると、


「……夢艶様に、連れ……もっと、見た、い……かいちょ、う、を、……主従も、え……」


片手は指先をパチパチさせて此方を向けているが反対の手は頭を押さえている。
しかし苦痛な顔をしているかと思ったが目が輝いている。息が荒いのは洗脳と本性が交互に入り乱れ苦痛に苦しんでいるからではない、あの反応は悶えている。


「天津、ストップ」
「あっ、瑛良様」
「雷!攻めの反対はなんだ!」
「瑛良様?!」


この言葉に雷は肩を震わせた。
そして開いた口は


「……受けっ!」
「守りだろ、腐男子がっ!」
「ぁっ!」


雷が口を押さえ瑛良に向かって放電する。
だが、瑛良は咄嗟にスラックスのポケットからカードを取り出し雷に向かって投げた。

カードは横回転ながら一直線に雷に向かう。

カードは雷と瑛良の間で稲妻と辺りバチンッと音を鳴らし大きく発光。

目が眩むがその隙に雷の横に回る。
雷は気付き放電させようとしたが目の前にカードが飛んできていた。

放たれれば放電を止めることは出来ない。雷の目の前で再び大きな音が鳴り発光した。


「っ!うわっ!」


流石の雷でも目が焼け咄嗟に両目を押さえた。


「最近では主従関係に狐が混ざりましたよ雷君」
「……っ、…三角関係?!……」
「はい」
「アウッ!」


さらに気を弛ませ天津は雷の首に手刀を入れた。

雷は一発でその場に倒れた。


「……一応ゴム製の縄で縛っておけ」
「了解です」
「あーぁ、俺の部屋の鍵と此処の鍵もう駄目だな」


瑛良が拾い上げたのは先ほど投げたカード。
それは部屋の鍵と生徒会室に入る為のカードキーである。
見るも無惨に真っ黒に焦げている。
もう使えないだろう。

それから瑛良はパソコンを確かめると一応起動した。が、ファイルはぐちゃぐちゃ、所々消えている。内蔵されているファイルはアウトだ。


「……はぁ、USBに入れといて良かった」


念のためUSBにも保存していた瑛良。
引き出しを開けてUSBメモリーを取る。
USBメモリーに入っているファイルをコピーすれば済むといざ中を見れば真っ白になっていた。


「……は?」
「瑛良様!終わりました!」
「真っ白……」
「え?あ、瑛良様?!瑛良様!気を確かに!」


瑛良は膝を付きその場で真っ白になった。


「瑛良様ぁぁぁぁぁあ!」


天津の叫びは校舎と運動場、本体や桃園達にまで響いたそうだ。


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