平凡勇者と腐った魔王様

□ラリマー勇者と神子と腐魔王
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「両親以外で人から物を貰うのは初めてで、凄く、すごーく嬉しいっす!大事に、いや、宝物にするッス!」


喜んで笑顔の勇者を見て神子の顔が凄く緩んだ。
俺ですら初めて見たぞ、神子の無意識な笑顔……レアだ!レア!

と、まぁ、そんなんで指輪の件は神子から勇者に渡せて一件落着。
微笑ましいホモォラブをありがとうございました。


と、感謝しつつ神子の勇者に対する優しさは抜かりないし、良いホモォだと思っていた……の、だが。


後日の放課後。
俺は勇者を見つけた。そして、勇者の隣にいる生徒も。しかもその生徒と勇者が手を繋いでいる所を。


「……フェロル!」
「あ、魔王さん!こんにちは!お久しぶりっス!」
「こんにちは、風紀委員長様」


勇者!お前には神子がいるだろ!
そんな、他の生徒と手を繋ぐとか神子が見たら浮気だと言って大問題に発展するだろうが!
そんな修羅場見たいが大抵仲裁役に回るからめんどくて嫌だ止めろ。


「あ、紹介するっス!隣のクラスのユーキ・コミカのユーキっス!お昼困っていた時に助けてくれて、初のお友達っス!」
「初めまして。以後、お見知りおきを」


深々と頭を下げて礼をした後の微笑みを見て、俺は気づいた。

くそ、騙された。
穏やかタイプの生徒かと思っていたが、違う。
この生徒の正体に気づき、俺はあの神子を……病んでやがる、と思った。


「これからユーキと買い物に行くっス!」
「……そうか、気をつけて行ってくるんだぞ」
「ういっす!」


手を振って勇者達を見送った後、俺は生徒会室に急いで向かった。
勿論、用事が有るのは神子の生徒会長だ!


「失礼する!会長はい、る……な、」


生徒会室を開けると会長の席に目が奪われた。
何故なら先ほど買い物に行くと言っていたはずの勇者が居るし、壁には勇者の写真が沢山貼られていたからだ。

あ、この神子手遅れだ。


「なんだ?俺はフェロルとの買い物を楽しんでいるんだが?」
「やっぱりあの生徒はお前が作ったゴーレムか。隣にいるフェロルもゴーレムだな?」
「そうだ」


神子は闇属性土使い。
土使いなら1度はゴーレムを作るが、人間に近い精密なゴーレムを作れるのは学園でこの神子しかいない。

今、神子は片目を閉じている。
きっとその片目は勇者と買い物に行ったゴーレムの目と繋がっているのだろう。

ゴーレムの視覚を繋げでる事が出来るとは、高等な魔術を使っている。
恐ろしい奴だ……だが、本物の勇者の傍にいないのに、ただ覗いているだけで勇者と買い物をしていると言えるのか?

いや、それよりも、


「何故ゴーレムを作った?それに、フェロルが知ったらどうするつもりだ?」
「フェロルの友達は俺が作ったゴーレムで良い。それ以外は認めない」
「お前、」
「知られたらまたゴーレムを作って友達として与えるだけだ」
「駄目だろ!お前、フェロルの事本当に」
「見ろよ」


投げ渡された書類。
まだ言いたい事が有ったが神子は聞かないだろう。
渋々書類に目を通すと俺は驚いて瞠目した。


「プライバシーもクソもないが、これは……」
「事実だ。後半は学園に入ってからのフェロルが受けてきた扱いだ。人とゴーレム。どっちの方が酷いんだろうな?……あぁ!フェロル、口周りにクリームを付けてる可愛い姿を見逃す所だった!くそっ、隣に居たら舐めるのに!!」


神子の後半の発言は置いといて、書類には勇者の生まれた時からの事が書かれており、生まれた村では勇者様として拝められていたがそれは生まれて間も無い期間だけで両親は金の亡者に変わり村の人は勇者を忌み子、化け物、悪魔だと影口や近寄るなと大人が言えばその子供も近寄らず、虐めに遭っていた。

そして学園生活も変わらずで、俺が気づかなかった所で牽制を受けていた。それに、小さな嫌がらせも。
酷いのだと両腕が包帯でグルグルになっているが赤く染まっている写真が貼られている。きっと切りつけられた傷だ、血の量からして傷は深いと思われる。

勇者の特殊能力の高速治癒で完治は早かったからか、傷を負っていたなんて気づかなかった。


「……この前、あげた道標の指輪を壊してしまったと泣いて詫びてきたんだ」
「!」
「転んで壊れたと言っていたが俺が頑丈に作った指輪だ、簡単に壊れるわけがない。だが、フェロルは正直に壊れた、いや、壊された理由を話してくれなかった」
「それで、これが調べた結果だと?」
「そういう事だ。ま、指輪は目の前で直してやったら直ぐに泣き止んで凄い!凄い!とはしゃいぎだしてな……子供だな。と思った」


神子はレアな笑顔でゴーレムの勇者の髪を撫でている。
神子の狂気だと思っていたが、神子なりの優しさ。

……それでも、やっぱり俺は友達がゴーレムだと知った時の勇者の心が心配だった。


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