短・中編置き場

□負けてから3日間の話
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『お前は部屋を壊した糞ガキ!殺す!』
「あ゙ぁ゙?やんのか?皮を剥いで財布にしてやろうか!!」
『人間ごときが!今度は負けん!ズタズタにしてワシがお前の皮を剥いでやるわ!』
「お前達止めよ。金なら我が与えてやるし、ハピィを殺したければ我を先に殺してみよ」

チャリンチャリンと俺の手にコイン2枚。
そして俺の前に立つ魔王に喋る大蛇はシューシュー舌を出して威嚇をするが、動けずに尾を床にペチペチ叩くだけだった。

折角戦えると思ったのに、残念だ。

「部屋はちゃんと修復されてるようだが不便はあるか?」
『ワシの人皮コレクションが無くなった。欲しい』
「残念だがそれは一から集めておくれ」
「残念だ、誠に残念だ……」

大蛇は落ち込みながら穴蔵へ入って行った。
大蛇の言う人皮はそのまんまで、今まで魔王に挑もうとした者達の大蛇に敗北した末路である。
気持ち悪過ぎてローリエが即燃やしたんだったな。

次の下の階に行くとケルベロス。
魔王の顔をベロベロ舐めて腹見せの完全服従体制である。

「うむ、この部屋も直ってるようだな。不便はあるか?」
『骨のコレクションが無くなった。骨欲しい』
「お前達に合う骨はなかなが見つからぬが、探しておこう」

骨じゃなくて海に打ち上げられた木でもいいんじゃないかと思う。
あぁ、そういえばケルベロスの骨コレクションも気持ち悪過ぎてローリエが即灰にしたんだったな。

次の下の階に行くと、ローリエが苦戦した若作りのババア魔女がいた。

『魔王様!私の目玉コレクションが無くなってるの!魔王様の目玉をくださいな!』
「すまぬが我の目玉はやれんし、ハピィの目玉もやれぬ」
『えぇー!マジョリン、超ショック〜!』
「部屋は直っておるな。次に行くぞ」

確かこのババアの目玉コレクションも気持ち悪過ぎてローリエが以下略。

残り下の2階も同じ様な感じだった。
入り口に戻ったら飛竜が上から現れて、魔王と俺を乗せて城の頂上へ。
中に入って階段を降りれば魔王の部屋がある階に戻るわけだ。

「グルッと回ったな」
「地下はまだ回ってない」
「地下の牢獄は無人だ。行ってもつまらんぞ」
「むしろ牢獄に人がいたら嫌だよ」
「そうだな、平和が1番だ。ハッハッハッハッハッハ」

本当に魔王らしくないな。
魔王なら世界征服とか、人間を奴隷にしたり殺したりしそうなんだけど……平和主義の魔王、か。

「ん?じゃあ、なんで人間の街にモンスターが現れるんだ?平和が1番なら魔物の森で留めておかないのか?」
「我は魔物、モンスター全てを統べることは出来ぬ。だから強力な魔物やモンスターだけを監視下に置き、弱いモンスターは街に出てしまうのだ。火山や海に居るのは元は守り神だから例外だな」
「へぇ、そうだっんだ」

俺としては全部監視下に置いて欲しいものだ。
スラム時代、貴族に攫われて貴族の悪趣味スライムに……思い出したくない。

「さて、次は……お昼だな」
「もうそんな時間?」
「うむ。食べに行こうか」

俺は姫様抱っこをされて瞬間移動。
朝と同じようにテーブルに並んだ料理を魔王の膝の上で食べさせられるのであった。

.
.
.

食べ終わったらまたベッドの上でゴロゴロ。

「魔王ー!体動かしたい!剣を振りたい!走りたいー!」

俺はゆっくりゴロゴロせずに駄々をこねてゴロゴロしていた。

「お金稼ぎー!きのこ探しー!お金稼ぎー!筋トレー!」

でないと割れてる腹筋がただの脂肪になってしまうし、弱くなってしまう!
そんなのヤダヤダ!
俺は男だから強くありたいんだ!
女みたいにナヨナヨしたくない!

「魔王、手合わせしてくれよー!」
「する必要が無いだろう。それと魔王ではなくアイと呼べ」
「魔王ー!手合わせー!運動したいー!」

ゴロゴロするなんて嫌だー!暇だー!

「なら、『アイ、キスして』と言ったら手合わせをしてやろう」
「本当に?!」
「うむ。『アイ、キスして』と言ってみよ」

そんなの簡単じゃん!
魔王に向き直って、正座して、

「あ、アイ、き、き……」

簡単、簡単に……

「き、……スゥー……き!きぃ……」

い、言えない!
言おうとしてるのに、何故だ、恥ずかしくて言えない!
言わないと手合わせがっ!強さが!筋肉がっ!

「き、き……きす……して……うわぁぁぁぁあん!!」

言えた!言えたけど恥ずかしい!布団に包まって饅頭だよ!恥ずかしい!恥ずかしい!きすして、なんかっ、うわぁぁぁぁぁ思ってより恥ずかしぃぃぃぃい!!!

何なんだよキスしてって!こんなのっ!こんなの!

「ハピィよく言えた。だが、手合わせは良いのか?」
「する!するけど……冷ましてから」

顔が熱いんだ。
それに、布団から出たらキスをされそうで、いや、でも、ファーストキスってわけじゃないんだし別に気にする事なんかないんだけどさぁ……。

「ま、魔王、出てきてもキスしないよな?言わせただけだよな」
「そうだ。するのは手合わせだけだ」
「よし!なら、」
「だが、我を魔王と呼ぶ度に『アイ、キスして』って言ってもらうぞ。ほれ、アイと呼べ。それと『アイ、キスして』と言え」
「うわぁぁぁぁぁん!!」

俺は20分くらい饅頭状態から出られなかった。


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