短・中編置き場

□狼の恋し方。
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窓から散々と太陽の光が注ぎ木々の影が伸び映る廊下は閑散としているが悲惨な状況が目の前にあった。

床に書類か生徒から集めたであろう課題プリントを広範囲に散乱させ腕を伸ばして俯せて動かないこの状況を作り上げたと思われる先公。現在、生徒や先公は授業中である為この廊下にはサボり魔な俺とこの先公しか居らず誰か居れば手助けしてくれただろう、だが生憎俺にはそんな思考は持ち合わせていない。

悲惨だが見なかった事にして通ろうと止めていた足を進ませ先公の横を通り過ぎた。


「待って欲しいな、二年Fクラスの東雲(シノノメ)君」


震えた声で名前を呼ばれ思わず足が止まる。
まずい、面倒事に巻き込まれると直感したにも関わらずオマケに少し身体を先公の方に向けたら目と目がバチリと合ってしまった。


「えへへ、拾うの手伝ってくれたら嬉しいな」


うんしょっ、と言って上半身を起こしてへにゃりと聞こえそうな音で笑う先公だが鼻っ柱と額が真っ赤で眼には涙が溜まっている。
痛々しい。
再び散乱しているプリントを見る。
どうやったらまとまらず綺麗に一枚一枚バラバラに散らばらせられたのか。
また先公を見る。
プリントを拾いつつ俺を見て困った笑顔で「お願いします」とまで言われた。

ため息一つ吐いたのは俺。


「ジュース一本奢れ」
「うん、いいよ」
「二度と巻き込むな」
「それは無理な話だね」


身体を屈ませ足元のプリントを一枚一枚拾っていく。
パサリ、パサリ
閑散な廊下は拾う音と授業中の教師の声が少し漏れて響いていた。


「……あっ、」
「てめぇ……」


もう少しで終わると云う時に先公が立ち上がると同時にバサバサバサと手元のプリントを綺麗に全部落としす。どうやったらそんなに綺麗に落とせるのか思う。
そして結局プリント全て俺が拾う羽目になった。
あの先公は器用に拾い上げたプリントを落としては拾いまた落として拾いの繰り返しという最悪な技を見せつけ「もう動くなじっとしてろ!」と怒鳴らざる得なかった。

また落とすんじゃないかと不安だがプリントを渡す。


「ん」
「ありがとう東雲君、ジュース何が良い?」
「金寄越せ」
「何が良い?」
「……炭酸」
「わかった!昼休み化学準備室においで、待ってるよ」


へにゃりの次はふにゃり
緩い笑顔を向けた先公はフラフラ手を振ってこの場を後にした。

正直また転ぶんじゃ無いかと心配になるが転んだらその時はその時で自己責任で完結。俺は知らない。二度と関わりたくないと思えた先公だ、ジュースは諦めて昼休みは中庭で飯食って昼寝でもしよう。
廊下は太陽の光を浴びて暖かい、木々の影が光を遮って眠りを誘うものだから思い立っては行動、購買に向かっている最中にチャイムが鳴り丁度良いだろう。


「そういや名前……まぁいっか」


先公は科学準備室に来いと言っていたから科学関係の先公に間違いない、だったら科学関係の授業に出なければ問題無いし平気だと購買へ足を向かったのだった。


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