短・中編置き場

□狼の恋し方。
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この学園には中等部から外部生として入学。

目付きが悪く人を寄せ付けない雰囲気が有った俺は入学当初から友人は中々出来ず半年にしてやっと友人と呼べる生徒は2人しか出来なかった。その2人と居ると楽しかったし夜は抜け出してやんちゃをしてスリルも味わって2人が居れば良い、ずっと3人で居れたら……

そう思っていたが高等部に上がる時に2人は家庭の事情によりこの学園を去った。

外出届けを出して2人に会いに行こうと思ったが2人も2人で転校で多忙強いられ新しい生活、友人関係も有る。そう考えると外出届けなんて出そうと思えず自然と疎遠になった。

2人が去った学園で2人以外とそんなに関わっていなかった俺は身長も伸び恐面に拍車が掛かり制服を着くずし髪をいじりピアス等をさり気なく着ければ見事に周りから畏怖対象にされ距離を置かれ触らぬ神に祟りなし、つまり孤立。

格好よく言えば一匹狼、孤高の不良。
ダサく言えばぼっち、寂しい奴。

高等部一年の1ヶ月で周りから見た俺が出来上がり二年に上がったばかりの現在も継続中。
元から1人で居るのも行動するのも苦と思わない性格だから何とも思わない。

俺、東雲 偲(シノノメ シノブ)の説明はこれ位で十分だろ。

中庭に着き木の影に有る特等席なベンチにドカリと座る。購買で買ったジャムパンを噛り空を見上げ良い天気だな、と微睡む。
そよそよ風が吹けば突然の放送に睡魔が邪魔された。


『二年Fクラスの東雲君、二年Fクラスの東雲くーん、約束の物用意したからおいで、来てくれないと寂しいな』


ブツッ………、

音量からして学園高等部全土に流された。
放送が切れると同時に騒つく校舎に俺を見ては本気で逃げて行く生徒達。
途中のジャムパン。
心地よかった睡魔。
糞先公による放送。

苛立って思わず手に力が入りジャムパンを潰してしまったがもう知らん。二度と関わらないと決めた先公だ。俺は何も聞いてない。

無視だ、無視。

決め込んだら潰したパンを捨て手を洗いベンチに戻って横になりカバンを枕にして安定する位置に頭を動かし気が済んだら目を瞑る。365日こんな天気だったら過ごしやすいと半分夢に浸りながら思えた。


『東雲くーん寂しいなー偲くーん…え?職権乱用?呼び出しているだけですから東雲君が来たら止めますよ』


処刑宣言が聞こえた気がするが気にしない。
何度呼ばれようが此処から動く気はない、先公に従うつもりなんて更々無い。
諦めろ先公。
無駄な放送だった。


『しのー……東雲くーん……しののめくんっ、』


悲しげな先公の声とBGMにドナドナが聞こえる気がした。騒つく生徒の声もはっきりと先生可哀想と言うしさっきまで逃げてた奴等は俺に痛い視線を刺し付ける。……おやすみ。


『……東雲、そこ動くなよ』


今までメソメソとした声が消えドスとまではいかない低い声が響き渡り数秒後には生徒が違う騒つきを立てた。一部キャーキャー女子かと言いたくなる様な響動めく奇声も聞こえてきたが恐怖から来ている声が過半数を絞めている。

ホストモードだとか東雲逃げろとか、あのも東雲落ちたなとか何なんだ?
いい加減寝かせてくれ。



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