短・中編置き場

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「duh duh duhh dnri duhduh dnridnri……」


6月初日。
暗い空は雨をサァサァと降らせていた。
湿気が籠もりジメっとする。
生徒達は気が少し落ちるくらいだ。

だが、雨に唄えばの出だしを繰り返し口ずさみ廊下をスキップする生徒が1人いた。


(居るかなぁ会長はん、約束通りブラッシングして、沢山撫でてマッサージしてもうて、果実の気を少しだけ頂戴させてもろぉて……『三日月…いや、杏烙。お前に俺の全てをやるよ』『あっ、会長はんっ、うちも会長はんに全部あげるっ』『杏烙』『あ、瑛良はん……ぁぁんっそんな急にっ、ふぅあっ、ぁっ……!』きゃやぁぁぁぁあー!うちはなんて破廉恥な妄想を!会長はんはプラトニック・ラブ主義さかいセックスの流れにはいかれへんっ!)


唄いながらそんな妄想をする風紀委員長(仮)、九尾の狐の成長途中の現在三尾の三日月杏烙(ミカゲアンヤ)である。

外見は雨に唄えばを口ずさむイケメン。
だが心の中は薔薇の情事18禁妄想願望丸出し乙女状態。
バレないのは狐のポーカーフェイスがフル稼働しているからであろう。


「I'm happy again I'm laughin' at coulds So dark up above …失礼、会長はんおる?」


唄を中断し扉をノックした。
その部屋のプレートには“生徒会室”と書かれている。
三日月は返事を待たずに扉を開けた。


「命令だ、誰にもバレずに柳霜士を誘拐し俺の部屋の牢屋に閉じこめろ。今日中に」
「了解しました」


会長の影に消えた庶務の天津。
そして目の前の会長は会長席に座りアイスミルクティーをストローで啜っていた。
そして三日月の存在に気づき目を合わせた。


「……三日月か?どうした?」
「会長はんの口からとんでも無い言葉が聞こえた気がしたんやけど、気のせいかなぁ?」
「どんな言葉だ?」
「誘拐、牢屋とか?」
「言ったな」


三日月は固まった。
あの聞こえた台詞は本当で、会長は柳副会長を攫って部屋にある牢屋に監禁すると。

監禁してどうするのか。

それは前にも言ったが三日月の頭の中は薔薇の情事18禁妄想願望丸出し乙女状態。
そちらの方にしか今は想像が行かない。

つまり、三日月の頭の中では会長と副会長がエスエム調教お仕置き躾プレイをするという妄想が巡る。
会長と副会長の絡みは頭の中で複数の青い薔薇が満開に咲き誇る。


「う、ううううちという者が在りながら会長はんの馬鹿ぁぁぁぁあ!浮気者ぉぉぉお!でも嫌いになられへんわぁぁぁうちも、うちもっっっ、うわぁぁぁぁあんっ!」
(うちも監禁して愛して欲しいなんて言えるかぁぁぁぁぁぁぁあ!)


来たばかりだと言うのに三日月は顔を赤くさせ泣きながら出て行ってしまった。

その後ろ姿を見た会長は、


「……何だったんだ、あいつ?」


と、首を傾けごもっともな感想を述べただけだった。

開いたままの扉から小さくなり角を曲がって階段を下りていく三日月を見てから会長の漆瑛良は雨に打たれる窓を見た。

そこには逆さの照る照る坊主が吊されている。


「……Let the stormy clouds chase Everyone from the place……」


三日月が唄っていた雨に唄えばを瑛良は口ずさみ再びアイスミルクティーを飲めば書類を手に取り目を通すのであった。

.
.
.


遡ること数時間前。
朝から漆瑛良(ウルシアキラ)は桃園達いや、正しくは副会長、会計、書記の3人を遠くから双眼鏡ごしで見ていた。

昨日、天津庶務から桃園は生徒達を洗脳し侍(はべ)らせイケメンハーレムよろしくしていると報告を受けた。
そして副会長、会計、書記も洗脳被害の1人であるらしい。
それが真実なのか確かめる為に朝からストーカー紛いな事をしている。
本来なら天津に任せればいいが己の目で確かめて見てみたい。
そして今後どうすれば良いのか考えなければならない。

洗脳されているなら解かなければならない。
だが、どうやって解けと?
桃園を倒すしか無いのか?

グルグルと頭は回る。
結局考えるのは後だと桃園達を観察する事に徹し放課後まで過ごした。


そして生徒会室で観察した結果、最優先させなければならない人物がいた。
あのまま桃園の側に居ると半月、いや、1
週間保たない。きっと1週間後に命を落とす危険が在る人物を見つけてしまったのだ。

瑛良からすれば想像通りの人物だった。


副会長の柳霜士(ヤナギソウシ)
朝から見ていたが彼の顔色は最悪なものだった。なのに無理して笑顔を作り桃園の側に寄り常に後ろから抱きしめている体制だったがアレは自分が倒れないようにする為に甘えているように見せかけての体制だ。

桃園から離れて授業を受ける姿は無くずっと寄り添っていた。

その時瑛良がサボんじゃねぇよ授業を受けろよ受けれるだろうがお前ら羨ましい授業受けたい受けたい受けたいと生徒会室から念を送り双眼鏡は軽くヒビが入った。

そして桃園と柳の2人がキスする所を3度見た。朝と昼休み頭と終わり。破廉恥な!と瑛良は再び双眼鏡にヒビを入れる。

だが、瑛良から見れば3回とも桃園から強請り柳は少し躊躇してから唇を重ねる。
ただ、重ねるだけだ。
前に誰かがキスしていたから躊躇していたわけでもない。
周りが見ていて恥ずかしいからでもない。
よく見れば柳は桃園の肩を持ち、押していた。

他の奴らとは違う。
他の奴ら、例えば狼谷は桃園からキスを強請られたらいきなり深くキスをして押し倒す。事に及ぶ前に他の桃園取り巻きイケメンが止めに入り暴動多発。
桃園はその暴動を少し離れた所から屋根が有る渡り廊下のベンチに座り副会長の腕にくっついて妖艶な笑みで暴動を見ていた。

自分が欲しくて争うイケメン共が滑稽で優越感に浸っている。

そして副会長が目を瞑り落ちるような早さで桃園に肩にもたれる。
もたれた副会長に桃園は満足そうにして副会長のサラサラの髪を指で絡めては梳いた。

副会長の苦しそうにする表情。
瑛良は胸に苛立ちが積もりに積もって爆発。とうとう双眼鏡をバキッと割った。


「……紅太郎」
「はい、此処に」
「副会長を奪還し保護する。命令だ、誰にもバレずに柳霜士を誘拐し俺の部屋の牢屋に閉じこめろ。今日中に」
「了解しました」


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