短・中編置き場

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平凡になりたい、平凡君という友達が欲しい。ただ、それだけだった。けれどまさか俺がこんな胸が苦しくなるという胸くそ悪い気持ちになる転機が訪れるとは……転機は花祭りが終わって一週間後だったと思う。

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何時も通り平凡な(平凡になりきっている)俺は朝飯食って遅刻せずに登校して真っ直ぐ職員室へ向かおうとしていたが足止めを食らった。


「おい、そこの平凡になりたがっているお前」


てっきりまた原田かと思ったが原田はこんな朝早く登校しない。
で、振り向いたら俺より見かけは断然平凡のくせに先公大好き先公狂野郎だった。


「……僕ですか?」
「きしょ、僕とか似合わねぇ。吐くぞ」
「何だよ。俺のハートはガラスで出来てんだぞヒビ入ったぞこの野郎」
「お前に吉報だ」


俺のガラスのハートをスルーした挙げ句にきっぽうって……きっぽうって何だ?鉄砲?きっぽうっていうおもちゃか?木の鉄砲?木のキャラクター?


「きっぽうってなんだ?」
「転校生が来る」


待て、きっぽうの漢字と意味の方のなんだ?なんだがって、転校生?こんな時期に?この学校に?


「俺の愛しの直人さんがお前の友達になってくれとお願いされた」
「それはどうも」
「加えてお前のKグループのボスに悩まされてる事も愛しの直人さんから聞いた」
「そ、そうか」


何故だ、こいつ前とキャラが違うつうか段々雰囲気が黒つうかオーラが黒くなってるような気がするんだが。
怒ってる?俺何もしてねぇよ?!


「なぁーんでわざわざ愛しの直人さんから俺以外の野郎の話を聞かなきゃならねぇんだよ。おかしいだろ?愛しの俺を目の前に話はお前のことばかりだ。聞いてる俺からすれば胸糞悪いったらありゃしねぇ」
「あー、つまり俺が邪魔だと言いたいんだな、解った、伝わったから睨まないでくれ。俺はお前と先公の仲を引き裂こうなんざ全然思ってない」
「お前がそうでもなぁ俺と愛しの直人さんとの会話は……って、ハハハハハハっ!それは昨日までの話しになるから気にするな!」
「は?」


意味が分からん、それに急に笑うな怖いだろうが引くぞ。


「俺はその対策をしてきたんだ!今日で終わる!愛しの直人さんと俺の間に何も無くなるんだ!俺と愛しの直人さんとの愛だけになる!」
「そ、そうですか」
「そうなんだよぉお。でなぁー、苦労したぜぇ。お前の悩みを解消するのはよぉ」


ぱさりと1枚俺に手渡された。
これは履歴書?写真の人物は外人か!と言いたくなるような大きな瞳にブルーアイにキラキラの金髪。男か女か分かりずらい奴だが美形って事は解る。外人かと思ったがコイツの出身は日本で育ちも日本。親が日本人と外国人。つまりハーフだが生粋の日本人だ。


「コイツが何だよ」
「お尋ね者」
「何を聞いてんだよ?」
「(馬鹿だこいつ。でもその馬鹿の言ってる意味が解る俺も大概か)Kグループのボスが探していた人物だよ。何も聞いてねぇよ」


あ、探していた人って意味か。
すいません〜って人から尋ねられる方のお尋ね者かと思った。


「で、こいつが転校生で俺の悩みが解消されるってどう繋がるんだ?」
「簡単だ。ボスの興味はずっと探していたコイツに集中する。つまり、長年探していたコイツにベッタリになる。最近一目惚れしたばかりでそんなに仲が深くないお前に興味はランチャーで吹っ飛ばされた如くに無くなる。つまり、もうボスや幹部野郎共にまとわりつかれることが無くなるって事だ」


えーと、それはつまり?


「簡潔に言うとボスや幹部が来なくなってお前の悩みは無くなるって事だ」
「マジか?!」
「そうならないと愛しの直人さんとの親睦を深められないだろうが。それに愛しの直人さんのお願いを叶えたんだ、どんなご褒美をくれるのかなぁ…って事でお前今日から職員室来るなよ。お前には屋上という領地が有るんだろ。来るなよ。絶対に職員室に来るなよ。俺と愛しの直人さんとのランデブーを邪魔するな。来たらお前を運動場のど真ん中に頭から埋めるからな」


手に持っていた履歴書を奪われて奴は早口で言うと走って行ってしまった。

えーと、要は先公とラブラブしたいから職員室に来るな、屋上で過ごせって事だな。
行って頭から埋められるのは嫌だしな、言われた通り屋上で今日は過ごそう。

俺の足は屋上へ。


その日、先公狂野郎が言った通り俺の前にボスと原田は現れず久しぶりに屋上で1人で寝て過ごし起きて夕日を見た時は邪魔されずに眠れたことに変に感動した。

翌日も邪魔されず1人で過ごし清々しいと思った。
その翌日は暇で職員室に行けば先公は逃亡中だった。
その翌日は物足りなさを感じた。原因はいつもボスか原田が話し相手になっていたり追いかけっこしていたからだと判明する。

その翌日、ボスと原田とすれ違うが何も反応が無かった。つまり、あの先公狂野郎の言った通り俺は奴らにとって空気となった事が判明。加えて転校生と一緒に屋上に来やがった。俺は何故かタンクの陰に隠れて過ごした。

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