短・中編置き場

□偽者勇者のハッピーエンド
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魔王討伐は3日後となり、回復した私達は1度解散した。
ザックは可愛いお嫁さんと子供2人がいる温かい家に。
メグミは教会の孤児院へ。
私は研究室に行き仲間達の研究がどうなっているのかを見に行きました。

すると、私が知らない事実が発覚しました。
勇者ジーンはこの研究室に研究費を払っていたのです。
仲間がそのお金を受け取り貯めていました。
私が魔王討伐に成功し帰ってきたらパーティーなり私の研究費に使うなり……私の為に貯めていてくれたのです。
本当は勇者ジーンから受け取ったお金の3分の1はみんなの研究費に使ったらしいですけど殆どが私の為に残してくれていました。
しかも、お金だけでなく研究に必要な薬草や鉱石、珍しい本まで贈ってくれていた。

お金大好き女遊び好きのゲスな勇者ジーンがこんなことをしていたなんて知りませんでした。

それはメグミとザックも同じでした。
ザックには旦那さんを借りてるからと多少(と言っても結構な金額)のお金と子供達と奥さんの誕生日プレゼントを贈り、
メグミには教会孤児院へ多額の資金をボールや人形、ノートやペンを贈っていたそうだ。

私達3人ともあの勇者ジーンがそんな事をしていたなんて信じられませんでした。
けれど、受け取っていた皆の勇者ジーンの特徴と私達が知っている勇者ジーンは一致しました。


私達は魔王討伐とジーン奪還に闘士を燃やしました。
ジーンはどんな扱いを受けていようが生きていると信じて。
私達はジーンになんとしてもお礼を言わなければならない。


それから3日後。
装備を整え、勇者と神子様、私とザックとメグミで魔王城までワープし再戦に挑みます。

けれど、勇者は「神子と2人で魔王に挑みたい。つか、お前達邪魔」と言った。
遠まわしにジーンを見つけてこいと言っているのだと神子がフォローを入れてくれた。

お言葉に甘えて私達はジーンを探しに行った。
囚われて拷問を受けていると思い地下牢を見たが地下牢は空だった。
手遅れだったのか、と諦めずに探し回り、最上階近くの高級な扉を開けた。

「あっ、アイ!仕事終わっ……」

部屋の中は天井付きのベッドや高級な家具が有り、その天井付きのベッドから髪の長い女の子が顔を出した。
そして私達を見て固まりました。

いや、見た目は女の子だが、声に聞き覚えが有り、近づいて確信した。

「ジーン、ですよね?」
「……」
「ジーン、えーと、無事でよかったわ!」
「……」
「ジーン、おなごだったのか?」
「……男、です」

上から私、メグミ、ザックでジーンです。
ジーンは顔を真っ赤にさせて俯いて今にも泣きそうです。
短かった髪が長くなり、真っ白なワンピースに髪と同じブラウンのリボンが腰に巻かれていました。

「……ジ、ジーン保護!王都に戻りましょう!」
「そうよね!」
「怖かっただろ、もう大丈夫だからな」

ザックがジーンの手を掴んだ。
けれど、ジーンはその手を払った。
震えながら言ったのは、

「いやだ、王都の方が、怖い……俺は、此処にいる」

どうして?と、困惑しました。
手を払われたザックはショックのあまり固まってます。

「王都に戻ったら勇者と名乗った罰を受け、スラムの奴らに何されるか、今まで以上に迫害され酷い仕打ちをされるに決まってる!」
「ジーン、落ち着いて、私達がいるわ」
「アイは言った!此処にいていいって!俺に、居場所をくれるって、だからっ、だから……」

ジーンは連れていかないでと言って泣き崩れた。
お金と女遊び好きでクズのジーンだと思えない。
一体、3日間の間に魔王と何があった?

「魔王に吹き込まれたのですか?」
「違う!」
「洗脳されたのですか?」
「違う!違う!」

ジーンに魔術痕はあったがジーンの精神や脳を弄ったような痕は無かった。あとは髪を伸ばす魔法痕くらい。
魔王はジーンに何の魔法をかけたのでしょうか?

「アイは、酷い、奴じゃない!」

ジーンが言い切ると、突然部屋の扉が開いた。


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