短・中編置き場

□魔王一目惚れ事件(魔王視点)
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我は魔王アイアール・I・エクステス。
勇者御一行が来たという事で玉座に座って待機。
数分後に来た勇者を見て我は一目惚れした。

「待ちに待った賞金1億ドルだぜぇ……1億ドルあれば女と遊び放題というか遊んで暮らせるぜぇ……ヒッヒッヒッヒッ!!」

サラサラとしたブラウンの髪に低身長、まだ声変わりがしてない高い声、大きなグリーンの目。
容姿は好み。長髪でワンピースの男の娘だったら超弩級ストライク。
性格や言葉遣いは捕えてから更生させれば良い。
そうと決まれば勇者確保!!

目を光らせ少し本気を出せば勇者御一行は瀕死状態になった。
なんと呆気ない。手下共はこんな奴らに負けるとは、もっと鍛えさせねば。

だが、我はピンチになった!
なんと勇者が秘密兵器と言って出したのが戦闘時どんな時でも1度だけ王都に戻れる道具を出したからだ!
なんてこったい!
勇者が王都に帰ってしまう!
瀕死状態までジワジワと痛めつけて確保しやすくしていたのに!
なんてこったい!

だが、王都に戻ったのは勇者を除くオマケ3人だけだで、目の前に勇者は残っていた。

「ははっ、魔力切れだ。俺だけ残っちゃったな」
「……」
「ひと思いに殺せ。いや、殺してくれ」

あれ?あれれ?
我に向かって賞金1億ドルとかヒッヒッヒッヒッとイカレ狂って下品に下衆笑いしていた勇者が剣を投げ捨てておとなしい。

「俺は、此処で死なないと駄目なんだ、生きて帰ったら地獄だ」

勇者の様子がおかしいぞ?
寧ろおとなしい方が我好み。
捕える予定だったら予定通りに捕えよう。

と言うことで、睡眠魔法をちょちょい〜とかけまして眠ったのを確認すると抱きかかえて我の部屋へ。

ベッドに寝かせて服を脱がして勇者の傷を治癒魔法でちょちょいのちょ〜いで治す。
それから勇者の聖痕みたいなただの刺青もちょちょいのちょ〜いで綺麗な肌に、古い傷跡もちょちょいのちょ〜いでスベスベの肌に治しちゃう。

傷を治したら汚れを拭き取って、髪を長く伸ばす魔法をサラサラ〜っと。ウハッ!眩しいっ!我好みの男の娘が目の前にっ!理想の男の娘が目の前に!真っ白なワンピースを着せると……完・璧。

こ、こんな超弩級ストライクな男の娘が居ていいのか?!我のベッドに眠っている!天使!
そうだ!目覚めたら1番に彼の好きなものを与えよう。
我への好感度を上げなくては!

何が好き?何が欲しい?花か?金か?女体か?城か?ちょちょい〜と、勇者の記憶を覗いて教えて貰うぞ〜!

生まれはどこだい?…………可哀想に、虐待されスラムに捨てられたのか。それからはゴミ捨場や路上で生活、盗みもしたか。酷いな、子供の体に暴力、性的行為まで……今まで生きてこれたのが不思議だ。
そして成長したこの子はスラムの大人に無理やり入れ墨をやられ勇者に仕立て上げられた。
偽物だとバレたら即処刑されるというのに、この子は言われた通りに城に向かい勇者と名乗り王に入れ墨を見せた。
王はちゃんと聖痕を確認しなかったのか、この子を勇者だと認め魔王討伐に向かわせた。
スラムの大人共は魔王討伐の謝礼金を寄越せと言った。勇者にしたのは俺達なのだからと。
この子は疼くしか出来なかった。
嫌だと言っても無意味で殴られ損するだけだと分かっていたからだ。

そして魔王討伐の旅に出た。
初めは弱すぎた。そんなこの子が可愛いと我は思った。剣と魔法を教わり強くなっていく。大会に出て賞金を貰い仲間にプレゼントをしていた。我もこの子からプレゼント欲しい。この子の笑顔を真正面から見たい。

お金が貯まるとこの子は女遊びをした。
けれど、女遊びと言うより女に遊ばれていた。
終われば虚しいと感じたのかその日以来女遊びはしてない様だ。
貯まったお金は3人に内緒で3人の関係のある所に仕送りとして送っていた。
自分のスラムに仕送りはしたくなかった様だ。
無駄に使われると解っていたのだろう、3人の武道家の家族や研究所、教会の方が有意義に使ってくれると解って渡していた。
なんていい子なのだ!
普通なら美味しいご飯を食べたりいい武器を買ったりいい防具を揃えたり服を買ったりアクセサリーを買ったり自分の為に使うものだろう!
宝箱で拾った物しか使わず服は古着屋で安く買うとか何故自分には金を使わず仲間には守銭奴を演じるんだ!
仕送りする金が無くなると焦って夜な夜な森に行ってモンスターを倒したり賞金首を狩ったり……この子はどうして無茶をするんだ!
そして仲間は何故気づかない!
仲間はこの子の表面しか見てないのか?!
この子が言う事を間に受けているのか?!
許せん!コイツらは次会ったら殺す!

数ヶ月後、武道家の奴がこの子にいい剣をプレゼントしていた。
この子は口では「へぇ〜良い剣じゃん、売ったらいくらになるかなぁ〜?女の子と沢山遊べるんじゃね?!」と、チャラけて言っていたが内心はそれどころでは無かった。(どうして自分なんかに、俺なんかにこんな良い剣を、扱える自信が無いと言うか本当になんで俺なんかに……)と、ぐるぐる悩ませていた。
結局「売るなよ、俺の貯金で買ったんだからな。大切に使えよ」と、頭を撫でなから言われたこの子は「へいへい」と軽く返事をしたが内心はとても喜んでいた。

この武道家の親心だろうか、この子を見る目が優しい。夜、魔術師と治癒師が眠ってから剣の手入れの方法を武道家に聞いていた。チャラけた様子はなく真剣にだ。そして教わり終わると寝ている2人には内緒にしていて欲しいと言うこの子。素直になれないツンデレなこの子も悪くない。可愛い。翌朝にはいつもの金の亡者の下衆笑い勇者に戻っていて武道家は苦笑いをしていた。

時に魔術師が熱を出して寝込んだ時は女と遊んでくると言って薬草探しをしていたし、薬草粥を出した時は薬草は金になるから余りで作ったと言って嘘をついた。本当は懸命に探して取ってきた薬草を全部使って作ったのにだ。流石に寝込んでいる魔術師も解っているだろう、優しくありがとうと言って食べていた。もうこの子は素直に言えないのだろうか!照れてるこの子も可愛い!

時には平然を装っていた女が辛い思いをしてると見抜いた。けれど、この子はこの村には好みの女が居るからもう少し滞在すると言った。仲間の女を休ませるのが目的だ。ちゃっかり武道家と魔術師がいない時を狙って女に痛み止めの薬と毛布を渡していた。勿論、武道家と魔術師はこの子の為に意図的に離れていたのだろうな、この子が部屋を出ようとした瞬間に2人同時に入ってきたのだから。この子は慌てふためいて女に夜這いしに来たのだと言った。嘘でもムカついた魔術師はこの子にチョップした。言い訳が下手なこの子は可愛い。わかり易くて可愛い天使だ。


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