短・中編置き場

□魔王一目惚れ事件(魔王視点)
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この仲間達と旅をしてきた勇者だが、ずっと寂しいと思っていた。
常に酷い罪悪感と疎外感を感じていた。

偽者勇者の自分を本物の勇者だと信じてる仲間を騙している罪悪感、帰る場所がある仲間達、帰りたくない場所ならある自分。
魔術師と治癒師がカップルなったと聞いて喜んだが疎外感が酷くなった。
羨ましいとも思った。自分にも好きになれるような人が欲しい。ただいまって言えばおかえりって返してくれる人。自分が帰れる場合。

居場所がある人が、とても羨ましかった。
今でも窓から見える家族で食事をしている暖かい所を見てしまうと羨ましくて仕方が無かった。

魔王討伐が失敗すれば魔王に殺されるか本物の勇者と神子に殺され、成功したとしてもスラムの大人に根こそぎ盗られただのスラムの子供に戻り死を待つだけだ。

魔王討伐、終わらせたくない。
けれど、いつかは魔王と戦う。
本物の勇者と神子に殺されたくない。
スラムに戻りたくない。
なら、魔王に殺されよう。

それが1番、気が楽だ。

.
.
.

此処でこの子の記憶を見るのを止めた。
目的は果たせた。
この子が1番欲しいものは、

「此処にいろ。我の愛玩動物としてな」
「……寝起き1番に魔王に俺は何を言われてるんだ?夢か?夢だよな?」
「夢ではないぞ。お前の名前はハピネス。我を幸せにする愛玩動物だ」
「嘘だろ…俺が、魔王の愛玩動物?」
「そうだ。これからはハピィと呼ぶぞ。ハピィと呼んでいいのは我だけだ。ハピィは我をアイと呼べ。いいな?」
「……」
「い・い・な・?」
「はぁ……まぁ、いいか。名前なんて元々無かったし、好きに呼べよ」
「ではハピィ!返事をせよ!」
「お、おう?!」
「ハピィ!」
「はい?」
「ハピィ!」
「……はい」
「ハピィ!」
「どう返事をすればいいんだよ!」
「アイ、なぁに?だ!」
「……」
「ハピィ!」
「……な、なぁに、アイ……うわぁぁぁあん!!」
「ハピィ可愛い!すごくよい!よいぞぉぉお!!」
「俺は死にたいくらい恥ずかしい!ちくしょぉぉお!!」

と、こんな感じの会話をしたり一緒に食事したり仕事中は膝に乗せたりハピィの居場所は此処だ、此処に居ろ、我の元から離れるな、可愛い、愛してると何度もハピィに囁いてた。

効果が有ったのか、3日後にハピィの仲間達が来たがハピィは此処に残ると自分から言ってくれて我はとても感動した。

それから人間が住む領域と我ら魔物が住む領域の不侵略条約を結び、魔物に人間の領域に出ないように命じ、魔物達がおとなしくなっていくと我が狙われる事はいつの間にか無くなった。

「愛しのハピィ、我の可愛い天使」
「もう、アイ、キスしてないで仕事しなよ」

今、我とハピィはラブラブで幸せである。

−終わり−

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