短・中編置き場

□書記様のお気に入りを辞めます!
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食堂で集会は行われたが、やはり書記様に恋してるメンバーから大ブーイング。
相手が風紀副委員長様でもブーイングは止まない。

明日にでも書記様に告白しても構わないのだが、この人達は今まで告白せずに心の内に止めて体の関係を繋げてきた。
告白をしてはいけないというルールは無いのだが、書記様は皆のものだから告白は禁止という暗黙のルールになっていたからだ。

まぁ、僕からすれば早々に当たって砕けて諦めた方が賢明だと思うけどね。

片思い連中は風紀副委員長様に体裁だ牽制だのどうやって別れさせようか書記様の目を覚まさせるか話してる。

僕は無駄だと思うよ。

「おい、中口」
「はい、何でしょうか?」
「明日、風紀副委員長の所も報告会見するそうだ」
「つまりは?」
「書記と風紀副委員長の親衛隊員全員参加、合同お付き合い宣言会見だ」

2隊同時って事か……風紀副委員長様にも親衛隊はいるなんて思ってなかった。
風紀副委員長のバックは風紀委員だと思っていたからだ。

「大変な事になりそうですね」
「あぁ。まさか風紀副委員長にも親衛隊がいたなんてな。しかも風紀委員も参加するだろうから大規模だろう」
「こちらは会長様達を呼びますか?」
「ややこしくなりそうだから呼ばん」
「ですよね」

明日は修羅場になりそう。
今日の集会は明日も集まる事と体裁、牽制など問題を起こさないように注意して終わった。


けれど、翌日の集会は想像以上に修羅場となった。
朝から書記様と風紀副委員長がお付き合いを始めたと報道部が号外発行し広めたし、周りの反応にオロオロする書記様の腕を組んでピッタリとくっつきながら登校する副委員長様は堂々としていた。

その成果が、これだ。

「やぁやぁ。うちのお姫様をたらし込んだんだのは生徒会の熊やらしいなぁ、えぇ?」
「姫はみんなのつまり俺のものだったのに、姫は俺達のだったのに」
「姫ってツンケンとしてるが頑張り屋さんなんだ、我儘な所もあるがお菓子をあげたらどうにかなるので……」

風紀委員長に過激そうな親衛隊員に世話焼き親衛隊員で、書記様の親衛隊員と似た人物達でとても親近感が湧いた。

修羅場なのは副委員長様の過激派と書記様の過激派のぶつかり合い、風紀委員と書記様の過激派のぶつかり合い、風紀委員と副委員長の過激派の身内のぶつかり合い……修羅場ではなくカオスでもある。
なんせ、副委員長様の世話焼き隊と書記様の世話焼き隊で「うちの子が〜うちの子は〜」と、親みたいに言い合ってもいるし。

当本人達は用意されていた紅茶とクッキーを食べてイチャイチャして、本当にカオスである。

だけど僕は思った。
世話を焼かれる2人が上手く付き合えるの?って。
どちらかが世話焼きに目覚めなければ我儘同士で喧嘩したら自分の意見を押して譲らず折れることが無いと思う。
短い付き合いになると思っていたけどその確率が上がると気づいた。
けど、本人達に言っても直さないだろうし、マイペース同士で喧嘩をしたら頼れる隊員に相談して仲直りをしそうとも思えて……大丈夫かな?

できたてカップルを見ながらもやもや考えていると、後ろから僕に声が掛かった。

「なぁ、」
「ん?僕?」
「うん。ごめん……君は輪に入らないのかな?って思って」

その人物は何処にでもいそうなイケメンでも不細工でもなく平凡な顔で、身長も高そうになく平均くらいだ。

「あぁ、僕は良いの。君は?」
「友達が姫のファンでさ、俺はそのオマケだから……此処に居ずらいというか、怖いというか」
「言い争ってるもんね。誰だって怖いと思うよ」
「そう、だよな……」
「……」

声は、悪くないかな。
友達のオマケでわざわざ集会に来て、逃げずに帰らうともしない彼はお人好しなのか不憫が好きにか。
少し薄幸そう。
でも、そんな雰囲気も悪くない。
僕は世話焼きで思春期の所為か性欲があると言うか、副委員長に邪魔されて発散してないんだよね。

「ねぇ、此処、抜けない?」
「え、でも、終わってないし」
「いいの。僕は幹部だし、隊長に先に帰るってメールすれば済むから」
「か、幹部?!」
「太樹様のね。行こうか」
「お、お、俺は、と、友達を待たないと、」
「君も友達にメールすれば良いよ。そう言えば名前は?」
「……秋田直樹」
「へぇ、太樹様と似た名前だね」
「……」
「直って呼ぶね」

この集会から逃げ出そうと直の手を掴むとビクって震わせた。
僕より背が高いのに怖いかな?
顔を赤くさせてウブ?
ウブな子は嫌いじゃないよ。

「今夜は帰さないからそのつもりでいてね」
「そ、それは、ど、どういう、」
「君が期待している通りだよ。僕の部屋は306号室」

直は周りを見てから僕の手を強く握り返して引っ張るように早歩きで食堂を出た。

ヒュー、直ってわかり易くて可愛い。
身体の相性が良かったら付き合おうかな。
書記様と副委員長様が別れるまでの間男として。
ふふっ。最低だな、僕。

「僕は中口京兎。京兎って呼んでね」


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