短・中編置き場

□俺の恋人は元ストーカー
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あれは、冬休み中のクリスマスイヴだったと思う。
街でふらふらと歩いていると気弱く綺麗な男の子が見るからに柄の悪い不良に絡まれていた。
誰もが見て見ぬふりをして横切って行く中、俺はその輪に入り綺麗な男の子を強引に引っ張って不良から逃げた。
全力で逃げ回って交番に駆け込んだ甲斐があって不良達は何処かへ行って姿が見えなくなった。
交番の中はパトロール中なのか空だった為、不良に中を見られなくて良かった。

「……君、大丈夫?」
「はい。助けてくださって、ありがとうございます」

遠目から見ても綺麗な子だと思ったけど、近くで見ても本当に綺麗で儚げだ。
それに、高そうなコート、マフラー、鞄、靴、腕時計を着てる所為かボンボン坊ちゃんにも見える。
だから狙われたんだろう。

「1人じゃ危ないから、友達か親を呼んで帰るんだよ」
「あの、お名前は……お礼をさせて下さい」
「礼なんていいよ。じゃあな」
「あ、待って、」

カッコイイヒーローは名乗らずに去るものだ。
俺はカッコつけて交番を出て、ふらふら散歩の続きを始めのであった。

......................................................

寒い寒い冬休みと三学期が終わり、俺は高校2年生となった。
新入生も入ってきた学校は部活勧誘や実力テスト、特別行事で落ち着かない。

帰宅部である俺はそんな中、ダルい、眠いと思いながらムサイ男子高校生活を送っているのだが……落ち着かない。
俺の後ろをコソコソ着ける輩の所為で。

その輩はたぶん、あの日だ。
あの日助けた男の子だ。
印象的だし、目立つから思い出せた。

「…………」
「……なに、かな?」

俺の後ろを隠れて着いてくるのは。
声をかけたら男の子はビクッと体を跳ねさせて電柱に隠れた。
見えて声を掛けたんだからさ、隠れても無意味なんだけど。

「ねえ、俺に用が……」

近づいて声を掛けたら男の子はビューーンと走って逃げてしまった。

何故逃げたし。
俺、話し掛けただけなのに。
俺の後ろを着けてたのはお前だろうに。
何故逃げたし。

歩いていればまた俺の後ろを着けるし。
何なんだあの男の子は。

それからというものの、登校、休み時間、昼休み、外での体育の授業、放課後、下校……毎日、殆どの時間にあの男の子の視線を感じていたし、後ろを着いてきていた。

コレってさ、ストーカーってやつ?
俺、ストーカーされてるの?

「1年の安曇(あずみ)君だね。学年1位2位を争う美男子だけど、お前をストーカーしているから残念美男子って言われてるよ」
「なぁ、なんで俺をストーカーしているのが聞いてきてくれよ。俺が聞いたらあいつ逃げるからさ、頼む!」
「えー……睨まれたり恨まれたりするのは嫌だからセッティングしてやろう」
「セッティング?」
「お互い面と向かって話し合うんだよ」
「どうやって?」
「俺に任せろ!」

友達に頼んだものの、任せて良かったのか不安だ。
まぁ、その不安が的中して頼まなければよかったと後に後悔する。

......................................................
その後というのがコレだ。

「……」
「……」

相談した放課後、友人に連れて来られたのは屋上の閉じ込めである。
俺が閉じ込められる前に俺のストーカーの安曇君を閉じ込めていとか……本当に頼まなければよかった。
ちなみに友達は「二時間後に開けに来るからごゆっくり!」と言った。
走り去った足音が聞こえたから何処かに行ったな……クソ。

「ごめん、俺の所為だ」
「……」
「携帯持ってない?俺のは電池切れしてるんだ」
「……電波が入りません」
「そうか、困ったな」

春前だとはいえまだ風は冷たいし、ブレザーでもジッとしていたら寒い。
それに校舎の屋上は街が良く見えて見晴らしが良いけど、高い所が苦手な俺には少し怖いし真下なんか見れない。

「すいません」
「ん?」
「僕の所為です。先輩は悪くないです。僕が先輩の後を追ってばかりいたから、ですよね」

この子、解ってたのか。
頭いいんだなぁ……それと着けてたと言わずに追ってたと言う辺り無意識ストーカーなのかもしれん。

「昼の話、聞こえてたのか?」
「いえ。先輩と僕と言えばこのくらいしか思いつきませんでしたから」
「そっか……確かにそうなんだけど、この場所じゃあなぁ」

暖かいファミレスとか、せめて風の通らない教室で話し合いたかった。
けど、2時間。
2時間も屋上で過ごさねばならない。

「……」
「……」

うん、無言で過ごすより話して過ごそう。
話題は……単刀直入で聞いてから話を広げようそうしよう。
寒さを紛らわしたい!


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