短・中編置き場

□俺の恋人は元ストーカー
2ページ/4ページ


「取り敢えず、自己紹介しよっか」

立ったままもなんだし、床は硬いけど座ってな。
って事でお互い向き合う形で座った。
真正面から見た安曇君は無表情で少し怖いけど、本当に綺麗って見る度に思う。

「山下達磨(やましたたつま)高校二年生、ニックネームはダルマ。10月23日生まれのA型。好きな食べ物は甘いお菓子、おでんだと汁がよく染みた大根と白滝。好きなバーガーはテリヤキのレタス抜きとアップルパイにシェイクのバニラ。好きなお弁当のオカズはコーンクリームコロッケとハンバーグ。嫌いな食べ物はレタス、キャベツ、キュウリ、ナス、味が水っぽくて味も食感も薄い野菜ですね。買い集めている雑誌と漫画は」
「ストップ!ストップ!ストップ!」

安曇君!俺のプロフィールの紹介をするのは止めて!てか、俺の自己紹介は自分でするから!

「俺の事をよく知っているのは解ったから、君の自己紹介をしてくれ」
「……僕は安曇弥涼(あずみいすず)。4月6日誕生日のA型、最近の趣味はお菓子作りです。達磨(たつま)先輩、マフィンとかスコーンは好きですか?」
「う、うん。好きだよ」
「良かった。近々ポストの中に入れておきますので宜しければ食べて下さい」

うーん、貰うのは良いけどポストの中に入れずに手渡しして欲しいかな!
それと俺の下の名前で先輩呼び?!
だるまじゃなくてたつま呼び?!
いや、それよりも自己紹介は終わったのだから本題だ。

「話は変わるけどさ、何で俺を後を追っていたのかな?」
「そ、それは…その、」
「怒らないから言ってごらん」

無表情でも何だろう、俺の自己紹介とかマフィンの件あたりは少し輝いて見えたし、今は少し戸惑って見える。
仕草、かな?今は目を伏せてるからそう見える。

「……お礼、したくて」
「お礼?」
「達磨先輩は忘れてると思いますが、去年の冬に僕は達磨先輩に助けてもらいました。そのお礼がしたくて」
「あー、覚えてるよ。商店街で不良に絡まれてた時のだろ?お礼なんていいのに」
「させて下さい。僕の気が収まりません!」

ズイっと安曇君が接近!
うおっ、美形間近!目が真っ直ぐに俺を見てる!
なんという美形パワーの迫力!

「じゃあ、お礼はマフィン?」
「いえ、それはフォンダンショコラにしてバレンタインに。お礼は、体でします」
「か、体で?!」

なんでどうして体?!
俺は安曇君をパシリにしたくないよ?!

「はい。達磨先輩が体を張って助けてくださったので、僕も体を張って返そうと思ったのです」

ズイッズイッと更に近くなって、俺の上半身は後ろにさがり手が付いた。

「今まではタイミングが見つからず、いざとなったら緊張してしまって話しかけられませんでしたが、今しかチャンスは有りません」
「あ、安曇、君?」
「本当はホテルか何処か室内が良かったのですが、此処で致します」

何を?!何を致す気なんだ?!
ちょっ、ネクタイ緩めないで!釦外さないで!
股間を触るなぁぁぁあ!

「安曇君!ストップ!ストップ!ストップ!」
「いえ、此処で止めてしまったらダメです。勢いも大切なんです。此処で止めたら、一生お礼が出来ないままになりそうですから」
「そう言われても…安曇君の手震えてるよ。それに、こんなお礼の仕方をされても困るし、嫌だなぁ」

完全に押し倒されてる状態で言うのもなんだけど。
こんな方法のお礼なんてお断りだ。
傷ついた目をする安曇君に悪いけどさ、こんな方法はダメだよ。

「お礼はさ、すぐ返さなくても大人になってからでもいいんだよ」
「でも、直ぐに返したいです」
「うーん、直ぐに返したくてもこの方法は不味いと思うけど?」
「そうなのですか?友人に相談したらお礼は体で、抱いて気持ち良くして返すが常識だと聞きました」

その常識は間違っている!友人と縁を切れ!質の悪い友人は直ぐに切れ!

「常識じゃないし、体は大切にしような」
「……僕、騙されたのですか?」
「俺、その友人を知らないから冗談で言ったのか騙したかのか判断しかねるよ」
「……すいません」

ススッと離れてくれてホッと安堵した。
あぁ、でも、無表情で落ち込んでるなぁ。

「それに!バレンタインにフォンダンショコラを渡したい子がいるんだろ!勇気を持って逆バレンタインをするんだし、尚更体は大切にしないと!」
「はい」
「お礼は、お礼はぁ……」

思いつかない!
バレンタインは来年だし!
どうしたものか。

「僕に思い出を頂けませんか」
「思い出?」
「達磨先輩を抱かせてください」
「ハグ?」
「キスアンドベッドイン」
「フォーッ?!」

えっ、ちょっ、まっ、んん?!

「今さっき体は大切にしようって言ったところだと思うんだけど?!」
「そうですね」
「なのに安曇君は何て言った?!」
「キスアンドベッドイン」
「イコール!同じだからな?!キスも体も大切にしなさい!」
「好きな相手なら、良いんですよね」
「そう。安曇君が好きな人と結ばれてからだな、」
「僕、達磨先輩が好きです」
「……」
「……」

フォーーーーッ?!!


次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ